法務コラム
契約書管理台帳の作り方と業務効率化の秘訣
投稿日:2025.10.03
多くの企業では、Excelやメール、チャットを駆使して契約書を管理しています。しかし、気づけば「どの契約書がどこにあるかわからない」「担当者しか案件の進捗が把握できず、ブラックボックス化している」といった事態に陥っているケースもあるのではないでしょうか。
非効率な手作業は、法務担当者が本来集中すべき、戦略的で付加価値の高い業務の時間を奪い、組織全体の成長を阻害する深刻な問題だといえます。
本記事では、契約書管理台帳の効率的な作り方と業務効率化の秘訣を解説します。
契約書管理台帳とは
契約書管理台帳とは、企業が取り交わした契約情報を一覧でまとめたリストです。多くの場合、Excelなどの表計算ソフトや専用のデータベースで作成されます。単純な契約書の控えではなく、重要な情報を一元管理することで、業務の「見える化」を実現します。
重要な契約書の期限や内容を正確に把握し、契約更新の見落としといったリスクを回避する上で、欠かせないツールだといえるでしょう。
契約書管理台帳が必要とされる理由
契約書管理台帳を用意していない場合、契約書の管理に関して以下のような深刻な問題が発生する可能性が高まります。
(1)契約書が締結された後、ファイルサーバーの深い階層や個人のPC、メールボックスに散在し、必要な時にすぐ見つけられない
(2)重要な契約の更新期限が把握しきれず、いつの間にか期限を過ぎてしまう
(3)担当者個人のPCやメールに契約書ファイルが保管され「属人化」が進むため、担当者の異動や退職時に契約書そのものが紛失するリスクがある
しかし、契約書管理台帳を活用できれば、重要な契約情報を整理することができます。
期限管理を可視化化し、見落としリスクを最小化する
契約書の更新や解約には、厳密な期限が設定されています。しかし、案件数が多くなるほど、担当者のリソースが圧迫されていくため、個々の期限を手元で管理し続けるのは現実的ではありません。
契約書管理台帳を導入すれば、契約満了日などの重要なメタデータに基づき、リマインダーの設定や期限の可視化が可能になります。これにより、重要な期限の見落としを防ぎ、企業の信頼性を揺るがすリスクを抑えることができます。
契約書管理台帳における必須項⽬
契約書管理台帳を最大限に活用し、業務の効率化と標準化を図るには、案件情報を網羅的に管理することが不可欠です。
以下は。契約書管理台帳の必須項目の代表例です。
(1)管理番号
(2)取引先
(3)契約の種類
(4)締結日
(5)契約開始日/満了日
(7)金額
(8)契約書原本の保管場所
(9)弁護士相談の有無
(10)関連資料
自社で扱う情報に合わせて、あらゆる契約書案件に共通する基本的な情報を記載しましょう。また、自社の業務フローやニーズに合わせた独自の項目を柔軟に追加できる点はメリットだといえます。
契約書管理台帳の作成方法
契約書管理台帳は、契約情報を一元的に管理し、業務効率化とリスク管理を強化するための重要なツールです。ここでは、管理台帳の作成方法について解説します。
目的と項目の選定
契約書管理台帳を作成する場合、最初は目的を明確にしましょう。主な目的としては、以下の点が挙げらます。
(1)契約書の紛失・見落とし防止:紙の契約書を物理的に保管するだけでなく、デジタルデータとして管理することで、所在不明になるリスクを最小限に抑える
(2)契約更新期限の正確な把握:自動更新される契約や、特定の期日までに解約通知が必要な契約について、事前にアラートを設定することで、更新漏れや不要な契約の自動更新を防ぐ
(3)契約内容の迅速な検索:必要な契約書をすぐに探し出せるようにすることで、業務効率が大幅に向上する
(4)契約履歴の一元管理:契約の締結から更新、解約までの履歴を一箇所に集約することで、契約に関する意思決定を迅速かつ正確に行う
そして、目的を達成するために、台帳に記載する項目を選定することが重要です。前述の項目を参考にして、簡潔・網羅的に設定しましょう。
管理ツールの選択と活用方法
管理台帳を作成するツールは、企業の規模や予算、求める機能によって選択することが重要です。
(1)Excel/Googleスプレッドシート:導入コストがほとんどかからず、基本的な操作方法を知っていればすぐに利用を開始できる。関数を利用して契約期限の自動計算やアラート機能を設定することも可能。ただし、複数人での同時編集には向かず、セキュリティ面では専用システムに劣る。また、データのバックアップを定期的に行う必要がある
(2)専用の契約管理システム:契約書の電子化やワークフロー管理、アラート機能など、契約管理に特化した高機能が搭載されている。アクセス権限を細かく設定できるため、セキュリティ面も強化される。契約の数が増えてきた場合やより高度な管理を求める場合に適している。デメリットは導入コストと運用コストがかかる
契約数が少ない場合はExcelから始め、事業の拡大に合わせて専用システムへの移行を検討しましょう。
運用ルールの策定と定着
契約書管理台帳は継続的に運用したうえで、最新の状態を保つためのルールを策定し、社内で徹底することが不可欠です。
(1)登録・更新ルールの確立:誰が、どのタイミングで、どのような情報を台帳に登録・更新するのかを明確に定める。たとえば、「契約締結後3営業日以内に担当者が登録」「契約内容に変更があった場合は、変更後速やかに更新」といった具体的なルールを設ける
(2)権限管理:誰が台帳を閲覧・編集できるのか、アクセス権限を明確にする。機密性の高い契約情報が不必要に流出するのを防ぐことにつながる
(3)定期的な監査:台帳の情報が最新かつ正確であるか、定期的に監査を実施する。情報の不整合を防ぎ、台帳の信頼性を維持する
運用ルールを徹底することで、契約書管理台帳は、企業のガバナンスを強化するための重要なツールへと進化します。
契約書原本との連携
信頼性を担保するためにも、管理台帳の情報と実際の契約書原本を一致させましょう。
(1)物理的な保管:台帳にの「管理番号」と、物理的に保管されている契約書のファイルやフォルダに記載された番号を一致させると検索しやすくなる
(2)電子データ化:契約書原本をスキャンしてPDF化し、管理台帳にそのデータへのリンクを貼り付けておくと、いつでもどこでも契約内容を確認できるようになる。リモートワーク環境においても非常に有効
契約書の検索性を高め、必要な情報に迅速にアクセスできる体制を構築します。
従来ツールによる契約書管理台帳の限界
法務業務の効率化とDXが求められる現代でも、多くの企業がExcelやメールといった従来のツールに頼っています。従来のツールでは、以下のような構造的な問題点があり、業務の効率化を阻む限界となっているといえるでしょう。
(1)契約書と台帳の情報が分散し、検索・連携が困難:契約書ファイルそのものはファイルサーバー、契約情報(メタデータ)はExcel台帳など、情報がバラバラに散在している。その結果、必要な情報を見つけるまでに時間がかかり、業務の非効率性が常態化している
(2)過去の知見やひな形が共有されにくい:過去の対応履歴や知見が個人のPCやメールフォルダに留まり、チーム全体で共有されにくい状態。担当者が異動や退職した際に、知識が失われるリスクある
(3)手作業に忙殺され、ミスも発生しやすい:契約情報の台帳への手動転記や更新期限のチェックといったルーティン作業が多いため、業務負担が増え、ヒューマンエラーのリスクが高まる
脱・Excel管理!契約書管理台帳を組織力へ変える実践ノウハウ
事業部からの依頼から始まる交渉の履歴、締結までの契約書のバージョン管理の情報など、契約書のライフサイクル全体を台帳で一元管理可能です。そのため、過去のデータを分析することが可能となり、法務部門全体の生産性向上や組織のガバナンス強化に貢献します。蓄積された情報を活用することで、法務部門の価値を最大限に高めることが可能です。
ここでは、契約書管理台帳のデータを活用し、Excel管理から脱却して組織力を高めるためのノウハウについてみていきましょう。
過去のデータから業務の傾向を分析する
契約書管理台帳のデータを定期的に分析することで、部門の業務傾向を正確に把握できます。
(1)どの部署からの相談が多いか、どのような種類の案件に時間がかかっているかといった傾向を把握する
(2)頻繁に発生する案件については、テンプレートやQ&Aを作成し、対応を効率化する対応時間の削減と業務品質の均一化が図れる
(3)特定の部署や案件に偏りがある場合、原因を特定し、組織全体での改善策を講じやすくする
案件データを可視化し、経営層へ報告する
法務部門の業務内容や貢献度を定量的に示すことは、部門の価値を理解してもらう上で重要です。
(1)案件数を月次や四半期ごとにグラフ化する。法務部門の業務量や繁忙期を定量的に示すことが可能
(2)案件の完了までのリードタイム(所要時間)を算出し、業務効率の改善度合いを可視化する。法務部門がどのように企業に貢献しているかを具体的に示すことが可能になる
(3)案件の分類項目を分析し、法務リスクの高い分野や頻発するトラブルを特定する。経営層にリスクマネジメントの重要性を説得力を持って提示できるようになる
契約書管理台帳システム選定のポイント
契約書管理台帳システムの導入は、企業の契約管理の効率化やコンプライアンスの強化につながります。しかし、多種多様なシステムの中から自社に最適なものを選ぶのは容易ではありません。ここでは、システム選定時に押さえておくべき重要なポイントを解説します。
自社に合ったツールを選ぶ
契約書管理台帳システムを選定する際は、自社の状況を正確に把握することが大切です。案件数や予算、必要とする機能(AI、他システムとの連携機能など)といった観点から、どのようにツールを比較検討すべきかを解説しましょう。
目的や課題を見極めることで、自社にとって最適なソリューションを見つけることができます。
費用対効果を経営層にも理解してもらう
システム導入にかかるコストに対して、業務効率化やリスク低減によって得られる長期的なメリットと比較しましょう。たとえば、法務担当者の業務時間削減や契約更新漏れによる損失回避額を算出すれば、投資の正当性を示すことができます。
サポート体制と実績を組閣する
導入後のスムーズな運用のため、ベンダーのサポート体制と実績は重要です。自社に似た企業の導入事例や問題発生時に迅速に対応してくれるかを確認しましょう。導入後のトラブルを未然に防ぎ、システムの活用を成功に導くことにつながります。
また、機能だけでなく、ベンダーとの長期的な信頼関係を築けるかどうかが、システム選定の鍵となります。
法務オートメーションOLGAがもたらす効率的な契約書管理台帳とメリット
企業の契約書管理は、手作業で行うと多くの時間と労力がかかります。しかし、法務オートメーション「OLGA」を導入すれば、業務を劇的に効率化し、ミスやリスクを減らすことができます。
OLGAが提供する主なメリットは以下の通りです。
(1)案件情報の一元管理と業務効率化:複数のツールに分散していた案件情報を一元管理し、進捗状況をリアルタイムで可視化できる。手作業による情報入力や確認の工数を削減し、業務効率を大幅に向上させられる
(2)業務の標準化と専門知識の活用:過去の案件情報や契約内容の検索と再利用が自動化される。そのため、担当者個人の経験に頼らず、部門全体のナレッジを体系的に活用することが可能。また、繰り返しの業務を仕組みで自動化することで、人が判断すべき業務に集中できる高生産性の法務体制を構築する
(3)現場のニーズに応える柔軟性と進化:企業の特定のニーズに合わせて、依頼フォームや案件台帳の項目を自由にカスタマイズできる。また、多数の法務オートメーションを実現してきた専任チームが、設定支援から運用相談まで丁寧にサポートする。平均3週間でフル活用可能な体制を構築できる
導入企業の声
ここでは、実際にOLGAを導入した企業の声を紹介します。
株式会社Looop様
株式会社Looop様では、法務案件の依頼をメールで受け付け、Excelに手動で転記していました。また、案件の進捗状況を確認する際は、Excelとメールを行き来する必要があり、情報管理が煩雑になっている状態でした。
しかし、OLGAを導入したことで、依頼が統一されたフォームで受け付けられるようになり、案件情報が自動で蓄積されるため、手動による転記作業が不要になっています。また、すべての案件が一目で可視化されるようになったことで、見落としを防ぎ、進捗状況も一元管理が可能になりました。
詳しくはこちらの記事から
https://olga-legal.com/case/looop/
株式会社SHIFT様
株式会社SHIFT様は、以前、法務案件の依頼窓口がメールやチャットなど依頼者によってバラバラでした。その状態を改善するため、メールで受け付けた依頼をExcelに手動で転記し、共有フォルダに契約書や関連資料を格納する体制で運用している状況でした。また、内製システムを導入したものの、システムのエラーや、アカウントを持たないグループ会社が利用できないといった課題を抱えていました。
しかし、OLGAを導入したことで、契約書に関する情報管理が大幅に効率化されました。案件ごとに契約書のバージョン、関連するやり取り、参考資料がすべて一つの画面に集約されるため、情報が分散する問題が解消されています。
詳しくはこちらの記事から
https://olga-legal.com/case/shift/
まとめ
契約書管理台帳は業務の「見える化」を実現しますが、さらに契約締結に至るまでの案件データもつなげて一元管理することで、法務部門全体の生産性が向上します。法務オートメーション「OLGA」の活用し、手作業に依存した非効率な業務から脱却し、プロセスを自動化することで、担当者はより本質的な法的課題の解決に集中できる体制を構築しましょう。