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契約書の保管期間は何年?主な方法も解説

法務オートメーションコラム

投稿日:2024.05.20

締結した契約書は、法律によって一定期間保管することが義務付けられています。数年から10年にわたり書類を保管しなければならないため、保管場所の確保や目的の書類を探す手間に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、契約書の保管期間に関する情報や代表的な5つの保管方法、保管に関するよくある課題について解説します。

契約書の保管期間は法律で決められている

契約書は任意で保管できるものではなく、法律で定められた期間は必ず保管しなければなりません。ここでは契約書の保管期間について紹介します。

会社法では「10年」の保管が義務

会社法432条では、契約書の10年間の保管を義務付けています。なお、会計帳簿の閉鎖の時から10年とされている点にも注意が必要です。取引先とのトラブル発生時には契約書が重要な証拠となりますし、法律で定められているため遵守しましょう。

なお、一般債権は10年で時効となるため、契約終了から10年以降で取引先とトラブルになるケースは基本的にありません。また、10年の保管期間を終えた契約書は保管義務がなくなるため、適切に破棄しましょう。

第432条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

2 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

会社法

法人税法では「7年」の保管が義務

法人税法第126条と法人税法施行規則第59条では、税務関係の帳簿や契約書などの保管期間を7年と定めています。これは法人税の申告期間から起算して7年という点に注意が必要です。帳簿には総勘定元帳や仕訳帳などが含まれ、棚卸表や貸借対照表といった書類も7年の保管義務があります。

法人税法ではこれらの書類の保管期間が7年と義務付けられているので、税務調査は7年以上前にさかのぼって行われることはありません。

ただし、青色申告法人が赤字決算で申告を繰り越す場合は、保管期間が10年になります。

第126条 第121条第1項(青色申告)の承認を受けている内国法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。

法人税法

第59条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から7年間、これを納税地(第3号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。

法人税法施行規則

電子帳簿保存法の保管期間も同様

一定の要件を満たせば、電子データで契約書や帳簿書類などを保存できる電子帳簿保存法がありますが、保管期間は紙の書類と同様です。電子データの契約書であっても、会社法では10年、法人税法で7年の保管義務があります。

その他の法律で定められた書類の保管期間

会社法や法人税法の他にも、書類の保管期間を定めている法律が存在します。保管期間について示されている主な書類は以下の通りです。

保管期間 書類 法律
2年 健康保険・厚生年金保険・雇用保険に関する書類 健康保険法施行規則34他
3年 労災保険に関する書類 労働者災害補償保険法施行規則51
3年 労働保険の徴収・納付等の関係書類 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則70
3年 派遣元管理台帳 労働者派遣事業法37
4年 雇用保険の被保険者に関する書類 雇用保険法施行規則143
5年 会計監査報告 会社法442
5年 有価証券届出書等の写し 金融商品取引法25
7年 領収書などの証憑類 法人税法施行規則59、67
7年 電子取引の取引情報 電子帳簿保存法施行規則8
7年 源泉徴収簿(賃金台帳) 国税法70、労働基準法108他
10年 帳簿 会社法432
10年 計算書類および附属明細書 会社法435

契約書の保管方法5選

契約書の保管方法にはいくつかの種類があります。ここからは、代表的な保管方法について5つ紹介します。

1. 紙の原本を保管する

最もオーソドックスな保管方法が、紙の契約書を原本で保管することです。多くの企業で古くから馴染みがあり、そのまま保管するだけなので手軽な方法ではありますが、キャビネットや倉庫といった保管場所を確保しなければならないのがデメリットです。保管場所や閲覧場所の確保にはコストがかかり、閲覧したい契約書を探すための手間もかかってしまいます。電子データのように複数人で共有するのが難しく、紛失や紙の劣化といったリスクも考慮しなければなりません。

2. 電子契約書で保管する

近年普及しつつあるのが、電子契約ツールを導入して電子契約書として保管する方法です。紙の契約書を作成せず、電子データとして契約書を作成し締結するため、保管場所の確保や管理に手間がかかりません。紙の契約書の締結で発生する郵送代や印紙税といったコストの節約にもつながります。

ただし、電子契約書の締結にはパソコンなどの機材が必要になるため、取引先から理解を得たうえで導入を進める必要があります。締結手順などについても周知が必要なため、資料にまとめて共有しましょう。OLGAの法務データ基盤モジュールは電子契約書ツールと連携できるため、契約書の検索や閲覧、共有がスムーズに行えるようになります。案件管理が楽になり契約業務を効率化できるだけでなく、締結済みの契約書を一元管理できるオプションもあるため、契約書保管に最適です。

3. PDF化して保管する

紙の契約書をスキャンしてPDF化したうえで保管する方法もあります。電子データ化するため、紙の契約書よりも効率的に検索・閲覧できるようになり、複数人での共有もしやすくなります。しかし、スキャナーでの取り込みや、ファイル名など管理するためのルール策定に手間がかかり、別途セキュリティ対策も施さなければなりません。法律でPDFではなく紙での保管を定められている書類も存在するため、全ての原本を破棄できるとは限らない点にも注意が必要です。なお、トラブル発生時に裁判において、スキャンコピーの契約書では証拠力が弱くなってしまうリスクもあります。

4. マイクロフィルムで保管する

契約書を撮影して縮小し、マイクロフィルムで保管する方法です。マイクロフィルムの耐用年数は100年以上とされており、紙に比べて長期間での保存が可能で、保管スペースの節約にもつながります。加えて改ざんのリスクも少ないなど、多くのメリットがあります。

一方で、マイクロフィルムの作成と読み取りには専用の機器が必要で、どうしても購入・保守のためのコストがかかってしまうのがデメリットといえるでしょう。また高温多湿の環境に弱く、保存環境が悪ければひび割れやカビなどが発生してしまう可能性もあるため注意が必要です。

5. 外部機関に委託して保管する

重要書類の保管を専門に扱う外部機関に委託し、契約書を保管する方法もあります。こうした外部機関は、書類保管のノウハウを有しているため、自社で管理するよりもセキュリティや防災面でより高い安全性を保つことができるでしょう。

ただ当然のことながら、委託にはコストが必要であり、その規模が大きくなればなるほど、必要なコストも上がっていくのが一般的。すべてを外部機関に任せるのではなく、本当に必要な部分だけサポートしてもらうよう、精査をしていくことが大切です。

契約書の保管にまつわるよくある課題

契約書の保管にまつわるよくある課題とその対処法について解説していきます。

1. 契約書を破棄するタイミングが管理できていない

契約書は、その役目を果たした後はしっかりと破棄していくのが理想です。しかし契約書を破棄するタイミングが管理できておらず、必要のない契約書を無意味に貯めてしまっているケースが後を絶ちません。

適切なタイミングで契約書を破棄できていないと、保管のためのスペースが膨大になり、必要な書類を探すのにかかる時間もどんどん膨らんでいってしまうなど、デメリットばかりが目立つことになるでしょう。

管理台帳に契約終了日を記載し、定期的に過去の契約書を整理する時間を設けるなどの対処が求められます。

2. 契約書の更新タイミングが管理できていない

契約書の中には、適切なタイミングで更新を行わなければならないものもあります。その更新を忘れていると、思わぬ出費が必要になってしまったり、不必要な利用料を支払い続けてしまったり、場合によっては大きなトラブルに発展してしまう可能性もゼロではありません。

こうした契約書の更新タイミングに関する問題も、契約書の保管に際して頻出する課題の一つ。定期的にチェックの時間を設けるなど、人の手によって管理していくことも大切ですが、システムなどを導入して自動でリマインドしてもらえるようにするのも効果的な対処法といえるでしょう。

3. 契約書の紛失防止体制ができていない

紙の契約書は、ちょっとしたミスで紛失してしまうものです。うっかり捨ててしまったりするのはもちろん、間違って違う場所に保管してしまったりしても、紛失したのと同様の苦労を味わうことになってしまいます。

こうした課題は、紙という実物があるものを使って、人というミスをする生き物が保管していれば、必ず起こるものと言っても過言ではありません。そのため、PDFなどの電子データで契約書を保管し、そもそも紙で契約書を保管すること自体を減らすのが、最も効果的な対処法となっています。

4. 契約書の閲覧に手間がかかる

契約書の保管数が増えれば増えるほど、狙っている一枚を見つけ出すために必要な手間も増えてしまいます。特に保管場所が定められていなかったり、案件や年次などで分別されていなかったり、管理が杜撰な状態であればあるほど、かかる時間や手間は大きくなってしまうでしょう。

管理台帳をしっかりと作成したり、より高度な管理システムを導入するなど、管理体制をしっかりと構築しておかなければ、閲覧にかかる手間を軽減させることはできません。

自社に適した管理方法を見つけよう

契約書の保管期間は法律で定められており、企業はそれらを厳守する義務があります。保管方法には様々な種類がありますが、中でも電子契約書は保管スペースのコストがかからず、管理や閲覧も効率化できるのでおすすめです。

GVATECH株式会社が提供するOLGAの法務データ基盤モジュールなら、電子契約書サービスと連携でき、案件ごとに情報を蓄積できるため各種分析も可能。オプションで締結済み契約書の一元管理もできるようになっており、契約書の保管にも最適です。

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