法務コラム
法務業務を効率化するためのアプローチ|法務の課題を解決するリーガルオペレーションズとは?
投稿日:2025.10.01

契約書レビューや管理、コンプライアンス対応など、法務部門の業務は多岐にわたります。しかし、直接的に利益を生み出す部署ではないという理由から、これまでDXの優先度が後回しにされてきたのが実情です。
ところが近年、この状況は大きく変わりつつあります。DX推進の波はバックオフィス部門にも本格的に広がり、AIや電子契約をはじめとするリーガルテックの進化によって、法務領域でも業務効率化の可能性が一気に高まっています。
この記事では、法務部門の業務効率化を成功させるために必要なステップを解説していきます。
目次
法務業務を効率化するためのアプローチ
法務の効率化というと、AI契約書レビューや電子契約など、リーガルテックの導入を思い浮かべる場合が多いですが、ツールの導入はあくまで手段にすぎません。まずは現状の業務を正しく理解し、課題を適切に設定することが出発点となります。
契約審査や相談を依頼する事業部側の工程を含め、どのプロセスで時間がかかり、ストレスを感じているのか、ひとつひとつ調査を行い、業務フローの全体像を明らかにする必要があります。その上で、ボトルネックとなっている業務課題を特定し、原因を深掘りしていきます。
例えば「契約書レビューの時間が長い」というボトルネックであれば、その原因が「ドラフトの品質不足」なのか「承認フローの段階過多」なのかで、取るべき解決策は異なります。
こうして課題を整理して初めて、解決に最適なアプローチが見えてきます。契約書テンプレートの整備やワークフローの見直しで十分な場合もあれば、リーガルテック導入が効果的な場合もあります。大切なのは、安易にツールに飛びつかず、全体の業務整理とボトルネック分析を経てから適切なソリューションを選ぶ姿勢です。
リーガルオペレーションズという考え方
法務業務の効率化を目指すうえでは、リーガルオペレーションズという考え方が役に立ちます。これは法務を「属人的な業務の積み重ね」から「組織として最適化された仕組み」へと進化させるためのマネジメント手法です。
その基盤として知られているのが、米国のCLOC(Corporate Legal Operations Consortium)が提唱する 「CORE 12」 です。これは、法務オペレーションを支える12の機能領域を体系化したもので、以下のような要素が含まれます。
- 人材管理(Talent Management):適切な人材配置や育成
- 情報ガバナンス(Information Governance):データやドキュメントの適正管理
- テクノロジー(Technology):リーガルテックの選定と活用
- プロセス最適化(Process Optimization):業務フローの設計と改善
CLOCが強調しているのは、これらの柱のうち特に 「人」と「プロセス」こそがイノベーションの前提であり、AIなどのテクノロジーはその上に乗る「加速装置」に過ぎない、ということです。どんなに優れたツールを導入しても、使いこなす人材がいなかったり、非効率な業務プロセスがそのままであれば、期待した効果は得られません。
つまり、リーガルオペレーションズとは、まず人材の活用と業務プロセスの整理を土台に据え、その上でテクノロジーを組み合わせて法務業務全体を最適化する考え方だと言えます。
参照:
CLOC’s Core 12 framework guides and supports operational excellence
The 2 P’s of Innovation – People and Process
(Corporate Legal Operations Consortium)
法務業務の効率化を成功させるためのステップ
適切な段階を踏んで効率化を目指すためには、以下のステップを意識するとスムーズに進みやすいでしょう。

- 業務棚卸し
まずは現状を正しく把握することが出発点です。契約レビューや押印稟議などの業務フローを可視化し、全体の業務工程を洗い出します。
- ボトルネックの特定
次に、全体の中で特に時間やコストを浪費している工程を特定します。依頼内容の不備なのか、レビューの属人化なのか、原因を掘り下げることが重要です。
- 優先順位づけ
改善のインパクトと実行しやすさを基準に、着手すべき順序を決めます。短期的に効果が出やすい改善から取り組めば、現場の納得感を得やすくなります。
- ソリューションの選定と導入
ここで初めて、ツールや仕組みを導入します。ポイントは「最新のシステムを入れる」ことではなく、「自社の課題を解決できるか」で判断することです。
- 社内展開と定着化
新しい仕組みは導入後が本番です。教育やマニュアル整備を行い、営業部門など依頼側も巻き込んで社内全体に浸透させることで、初めて効率化の効果が持続します。
これらのステップを進める際には、常にリーガルオペレーションズの視点を持つことが不可欠です。人とプロセスを土台に据えたうえでテクノロジーを適切に組み合わせれば、効率化は一過性の施策に終わらず、法務部門の戦略的な役割強化へとつながります。
法務業務の非効率と自動化による解決策
人とプロセスの整理ができたら、いよいよテクノロジーを活用して改善を進める段階です。ここでは、法務業務の中で特に非効率が発生しやすいポイントと、それぞれに対する自動化のアプローチを紹介します。
【法務業務の自動化ポイント】

法務部門への案件依頼
案件依頼の段階では、必要な情報が不足しているために法務と事業部で確認の往復が発生し、着手が遅れるケースが少なくありません。依頼フォームを用意して契約類型ごとに必須項目をあらかじめ記載してもらう仕組みにすれば、法務側は最初から十分な情報を受け取ることができ、コミュニケーションの手間を大幅に削減できます。
おすすめ資料:その案件受付管理ツール、本当に“法務向き”ですか?法務の現場で選ばれている案件受付管理ツール6選
契約レビュー
契約レビューは属人化が進みやすいうえに、過去案件や基準を参照しながらの確認に時間がかかります。AI契約書レビュー支援ツールを活用すれば、契約類型に応じてチェック項目や審査プレイブックを自動で提示でき、工数削減と品質の平準化を同時に実現できます。
修正やりとり
契約書修正のやりとりは、メールやチャットが混在することで最新版が不明確になりがちです。事業部は慣れたツールを利用しつつ、法務はシステムで一元管理する形にすれば、やりとりの履歴が整理され、常に最新版を把握できるようになります。
ステータス確認
「今、誰のボールか」が曖昧なために進捗確認や催促が頻発するのも典型的な課題です。システムで「法務審査中」「事業部確認中」といったステータスを可視化する仕組みを整えれば、責任の所在がクリアになり、案件のリードタイムを短縮できます。
押印稟議と契約締結
押印稟議は紙や手動のフローに依存すると承認が滞りやすい領域です。ワークフローシステムと連携して契約情報から自動で稟議を起案すれば、承認までのスピードが格段に上がります。さらに、電子契約を導入すれば、締結データを自動で契約管理システムに格納でき、締結から管理までをシームレスにつなげられます。
おすすめ資料:ワークフローシステムがあっても法務案件管理システムは使える?よくある3つの思い込み
契約書管理
締結後の契約書を紙やファイルサーバーで管理していると、検索性が低く、更新漏れのリスクも高まります。契約管理システムを使えば契約内容を自動で読み取り台帳を作成し、更新期限のアラートも通知されるため、リスクを最小化しつつ管理の手間を削減できます。
法務業務効率化に役立つ主要ツール・サービス
近年はリーガルテックの領域が広がり、多様なサービスが登場しています。ここでは主要なカテゴリと代表的なサービスを紹介します。
AIアシスタント
法務相談やFAQ対応をAIで自動化する仕組みです。事業部からの問い合わせ対応を効率化し、ナレッジの活用を促進します。
代表例:OLGA(法務データ基盤モジュール)、LegalOn Cloud
案件受付管理
事業部と法務担当者との間で、法務案件の相談‧受付‧対応状況を管理するサービスです。
代表例:OLGA(法務データ基盤モジュール)、HighQ、SharePoint、kintone
契約書作成・レビュー
契約書のドラフティングやリスクチェックを支援するサービスで、AIが条文の抜け漏れや不利条項を検出し、レビュー品質を均一化します。
代表例:OLGA(AI契約レビューモジュール)、LegalForce、LeCHECK
電子契約
契約締結をオンラインで完結させるサービスです。印刷・押印・郵送の手間をなくし、スピーディな契約締結を実現します。
代表例:クラウドサイン、GMOサイン、DocuSign
締結済み契約管理
締結済み契約書を格納し、検索・期限管理・アラート通知を自動化し、更新漏れや情報の散逸を防ぎます。
代表例:OLGA(契約管理モジュール)、LegalForceキャビネ、Hubble mini、Contract One、MNTSQ
CLM(Contract Lifecycle Management)
契約の作成から審査、承認、締結、管理までを一元化するシステムです。契約ライフサイクル全体をカバーすることで、全体最適による法務DXを支援します。
代表例:OLGA、ContractS CLM、MNTSQ、LegalOn Cloud
関連記事:CLM(契約ライフサイクルマネジメント)とは?業務フローを解説
リーガルリサーチ
法令・判例・解釈を効率的に検索できるサービスです。近年は生成AIとの連携により調査スピードと精度が向上しています。
代表例:Westlaw Japan、LEGAL LIBRARY、Business Lawyers Library
コンプライアンス管理
規制遵守やリスク検知を自動化するサービスです。ガイドラインや規制改正の追跡、内部統制の効率化に役立ちます。
代表例:SafeBiz、NAVEX One、LexisNexis ASONE
法務の業務効率化を強力に支援する「OLGA」
ツールの選定には、整備された業務プロセスに自然に溶け込み、現場の負担をできる限り抑えつつ効率化を促す設計が重要です。GVA TECHが提供する「OLGA」はまさにそのような思想のもとに設計された法務オートメーションツールです 。
業務情報を自動で記録・蓄積し、チームでのナレッジ共有や進捗管理を可能にすることで、無理なく法務業務の効率化を推進できます 。

業務の進捗を可視化し、負荷調整を支援

OLGAは、すべての案件の進捗状況と対応履歴をリアルタイムで可視化します 。管理者は誰がどの案件にどのように対応しているかをひと目で把握でき、負荷の偏りや対応の遅れにもすぐに気づくことができます 。状況に応じた業務の再配分やフォローアップも容易になり、チーム全体の対応力と安定性の底上げにつながります 。
過去事例を活かし、対応の質とスピードを向上

OLGAに蓄積された過去の案件履歴は、キーワード検索ですぐに参照できます 。類似事例をもとに判断の方針を立てたり、過去の対応内容を参考にしたりすることで、対応の質とスピードを向上させることが可能です 。特に経験の浅いメンバーにとっては、業務を進める上で大きな支えとなり、ナレッジの属人化を防ぎ、再現性のある運用を実現します。
依頼フォームで情報を整え、差し戻しを削減
法務対応で頻発する手戻りの多くは、依頼時点での情報不足に起因します 。OLGAでは、依頼フォームを通じて必要情報の記載を柔軟にカスタマイズすることができ、初回から精度の高い依頼を受け取る仕組みを構築することができます 。
確認や差し戻しの手間が減ることで、法務担当者は判断や交渉といった本質的な業務に集中でき、結果として業務の質とスピードが大幅に向上します。

分析ダッシュボードで、対話と評価を後押し
OLGAには案件の種類や契約類型、依頼元部署など案件データを自動で集計・可視化する分析ダッシュボードが搭載されています。

1on1や評価面談の際に、主観的な印象ではなく具体的な実績データに基づいてフィードバックできるため、納得感のある評価や成長支援がしやすくなります。成果が正しく可視化され、メンバー同士の相互理解が深まることで、マネジメントの質も高まります。
このようにOLGAは、現場の負担を増やすことなく、業務の可視化・ナレッジの蓄積・成長支援といった「定着」に必要な要素を、日々の業務の延長線上で自然に実現します。特定の人に依存せず、誰もが安心して働ける仕組みを整えることで、チームの力を底上げしながら、持続的な組織づくりを強力にサポートします。
法務業務効率化の本質は「仕組み×ツール」
法務部門の効率化は、単なる省力化ではなく、戦略法務へシフトするための基盤づくりです。その第一歩は、業務を棚卸しして現状を可視化し、属人化や重複を洗い出すこと。さらに「リーガルオペレーションズ」の視点を取り入れ、人・プロセス・テクノロジーをバランスよく最適化することが欠かせません。
リーガルテックは、この仕組みを加速させるための強力な手段です。自社の課題に合ったツールを段階的に導入していくことで、効率化は一過性のものに終わらず、持続的な成果を生み出します。
まずは自社の法務業務のボトルネックを特定し、「仕組み×ツール」で効率化を進めることから始めてみてはいかがでしょうか。

