投稿日:2025.11.28

企業の法務部門では、契約書レビューや新規事業の立ち上げ、コンプライアンス対応など、日々多くの判断が求められますが、その基盤となるのが「リーガルリサーチ」です。

近年は有料のサービスを活用しながら調査の質とスピードを高めるケースも増え、リーガルリサーチは大きく進化しつつあります。

この記事では、リーガルリサーチの基礎から活用すべきデータベース、実務的な調査手順まで体系的に解説していきます。

リーガルリサーチとは

リーガルリサーチとは、法令・判例・通達・ガイドラインなどの法情報を調査し、依頼に対する法的根拠を明らかにする業務を指します。企業法務だけでなく、弁護士・司法書士など法律実務に携わる専門家が必ず行う調査であり、法的判断の正確さを支えるもっとも根幹の作業といえます。

企業法務におけるリサーチの主な目的

リーガルリサーチには、企業が適切に法律を遵守しながら事業を進めるための明確な役割があります。目的を理解すると、調査の進め方や確認すべき情報が自然と整理されていきます。

適法性の確認

事業活動に関連する法令を確認し、取引やサービス提供に問題がないかを確認します。特に規制領域の多い金融、不動産、医療、プラットフォーム事業などでは欠かせないプロセスです。

リスクの把握

違反の可能性がある場合、どの程度のリスクが生じるのか、行政指導・罰則・契約トラブルなどの影響を把握します。経営判断や事業部門への助言にも直結します。

契約書レビューの根拠整理

契約条項の修正やリスク指摘には、法令や裁判例などの明確な根拠が必要です。リーガルリサーチによって、修正方針の裏付けを明確にできます。

新規事業の法的検討

新しいサービスや取引スキームを検討する際、どの法域が関係するのか、どの規制が適用されるのかを整理します。前例が少なく判断が難しい場合ほど、調査の質が重要になります。

リーガルリサーチの調査対象

調査対象となる情報は多岐にわたります。最も基本となるのは法令(法律・政令・省令など)で、必要に応じて通達や行政解釈、判例や業界ガイドラインなどへ範囲を広げていきます。特に企業法務では、契約・労務・個人情報・独禁・金融規制など分野が広く、最新情報を継続的に追う必要があります。

リーガルリサーチの重要性

リーガルリサーチは単なる“調べもの”ではなく、契約書の条文修正や、社内規程の整備、新サービスの適法性判断など、企業の実務判断の土台となります。根拠のない判断はリスクになり、必要以上にリスクを懸念した過剰な判断は機会損失につながります。だからこそ、一次情報に基づいた精度の高い調査が求められます。

弁護士と企業法務におけるリサーチの違い

弁護士のリーガルリサーチは訴訟や紛争解決を見据えた深い判例分析が中心ですが、企業法務のリサーチは“ビジネス判断に使える根拠”を整理することが目的です。どちらも重要ですが、企業法務ではスピードと実務への落とし込みが特に求められます。

リサーチ対象となる法情報の種類

リーガルリサーチの対象となる情報は多岐にわたり、その優先順位や読み方を理解することで、調査の質が大きく変わります。ここでは、企業法務が日常的に参照する情報や主要なデータベースを体系的にまとめます。

法令

法律・政令・省令を確認できる一次情報です。条文の定義、要件、罰則規定などを確認する際の出発点になります。

◯e-Gov法令検索(デジタル庁)

法律・政令・省令などの条文を最新の状態で確認できる公式サイトです。改正履歴や参照条文も追いやすく、リーガルリサーチの出発点としてもっとも基本的なツールです。

参照:e-Gov法令検索(デジタル庁)

判例

類似事案の裁判例は、条文の適用判断やリスク評価に欠かせません。企業法務では「最判」と合わせて下級審の傾向も確認します。

裁判例検索(裁判所)

最高裁・高裁・地裁の判例や最新の裁判例を検索できる公式データベースです。判決文の全文を確認でき、要件判断や争点整理に役立ちます。
ただし、公開されている判例の数には制限があり、より多くの判例にアクセスしたい場合は後述する有料のリーガルリサーチサービスを活用する必要があります。

参照:裁判例検索(裁判所)

ガイドライン(各省庁の公式資料)

金融庁や経産省、総務省など各省庁が発表するガイドラインは、法の解釈や運用に関する考え方を示す重要資料です。実務では、ガイドラインの内容が“事実上のルール”として扱われるケースも多くあります。

各省庁の公表資料(金融庁・総務省・経産省など)

ガイドライン・通達・FAQ・行政解釈など、実務上きわめて重要な公式資料が公開されています。企業法務の判断において、実質的には法令に匹敵する重みを持つこともあります。

通達・行政解釈

行政機関が法令の解釈を示す文書で、実務判断に直結する情報です。税務・労務・金融規制などでは特に重要です。

国内の主要なサブスクリプション型リーガルリサーチサービス

商用DBは、深い分析や過去事例の横断検索を行う際に役立ちます。一次情報だけでは判断が難しい場面で、大きな支えとなるツールです。

Legalscape(株式会社Legalscape)

企業法務分野に必要な情報を網羅的に提供するリーガルリサーチツールです。法律書籍、法令、パブリックコメントなどの法律情報を横断的に収録しています。

法情報の要約等でAIを積極的に活用しており、同社のAIは司法試験の「短答式試験」で満点に近い正答率を記録しています。

運営企業 株式会社Legalscape
Webサイト https://www.legalscape.co.jp/
掲載コンテンツ 書籍:4,000冊超
法令:約8,000件
パブリックコメント:約27,000件)
ガイドライン等:分野ごとの最新資料を随時掲載
機能 AIリサーチ機能
プレビュー機能/目次機能
リンク・逆引き機能
バインダー・ナレッジ機能
利用料金 要お問い合わせ
その他 1ヵ月間無料のトライアルあり
法律事務所向けのプランもあり(要お問い合わせ)

参照:リーガルスケープのAI、司法試験の選択問題で満点水準

LION BOLT(株式会社サピエンス)

さまざまな法律書や雑誌を集約し、横断検索を提供するサービスです。特に、電子化されていない重要な紙媒体の文献も検索対象としている点が大きな特徴です。

運営企業 株式会社サピエンス
Webサイト https://law-books.lionbolt.jp/
機能 紙媒体を含めた、1万冊超の法律書や雑誌の情報を横断した本文検索
利用料金 月額2,980円(税抜き/1アカウント)
その他 トライアル期間あり

LEGAL LIBRARY(株式会社Legal Technology)

2019年にサービスを開始し、有料会員1万名以上が利用しています。法律書籍に加え、経済産業省、厚生労働省などの官公庁資料の一部もデータベース化されている点が特徴です。

運営企業 株式会社Legal Technology
Webサイト https://legal-library.jp/
掲載コンテンツ 法律書籍や官公庁の資料、パブリックコメントなど、総計3,5000点超収録
機能 書式・雛形のWord出力機能
印刷機能
書籍本文のコピー&ペースト機能
利用料金 個人向けプラン:5,200円/月(税込)
法人向けプラン:5,200円/月(税込)(10名以上の利用でボリュームディスカウントが適用)
その他 10日間無料のトライアルあり
※一部機能に制限あり

TKCローライブラリー株式会社(株式会社TKC)

株式会社TKCが運営する、企業法務を対象とした総合法律情報サービスです。35万件以上の判例に加え、法律雑誌、日経新聞各紙からのニュース更新を1日2回行うなど、トレンドや速報性を重視したコンテンツラインナップも特徴です。

運営企業 株式会社TKC
Webサイト https://www.tkc.jp/law/lawlibrary/pr/lp/company/
掲載コンテンツ 法令、判例、法律雑誌、日経各紙からのニュース、100名以上の執筆者による各法律のコンメンタール
機能 キーワードから各紙を横断検索
判例、法令間の相互リンク
利用料金 スペシャルEdition:33,000円/月(税込)
プレミアムコース:29,700円/月(税込)
スタンダードコース:23,100円/月(税込)
ベーシックコース:16,500円/月(税込)
※価格は1アカウントの場合。複数アカウントの契約の場合割引あり。プランにより対応する法律雑誌の種類が異なる。
その他 10日間無料のトライアルあり

弁護士ドットコム LIBRARY

弁護士ドットコム株式会社が提供する、法律実務書や雑誌3,000冊以上をオンラインで閲覧できるサービスです。弁護士ポータルサイトとの連携による無料トライアルや、登録弁護士向けの割引価格が用意されています。

運営企業 弁護士ドットコム株式会社
Webサイト https://library.bengo4.com/
掲載コンテンツ 3,000冊超の法律実務書と法律雑誌
5,000点超の書式
機能 AIアシスタント機能
本棚機能
閲覧ページのコピー、印刷機能
利用料金 要お問い合わせ
その他 弁護士ドットコム登録弁護士向けの割引制度あり

BUSINESS LAWYERS LIBRARY

同じく弁護士ドットコム株式会社が提供する、企業法務に特化した書籍・雑誌のラインナップが特徴のサービスです。プランによってはセミナー受講やアーカイブ閲覧も無料で提供され、実務知識の習得をサポートします。

運営企業 弁護士ドットコム株式会社
Webサイト https://www.businesslawyers.jp/lib
掲載コンテンツ 3,000冊超の法律実務書と法律雑雑誌
弁護士監修セミナー
新人教育に使える学習用動画
機能 AIアシスタント機能
本文コピー、印刷機能
ページ共有機能
利用料金 個人向けプラン
6,930円/月(税込)

法人向けプラン
ライト:6,930円/月(税込)
スタンダード:33,000円/月(税込)
エンタープライズ:要問合せ
※アカウント数はプランに応じ変更

その他 個人向けは10日間、法人向けは15日間の無料トライアルあり

D1-Law

法律専門の出版事業を祖業に、100年以上の歴史を持つ第一法規株式会社が提供する総合データベースです。法令、判例、文献情報が網羅され、実務書の参照性に優れており、国内の法務実務で幅広く利用されています。

運営企業 第一法規株式会社
Webサイト https://www.daiichihoki.co.jp/d1-law/
掲載コンテンツ 法令「現行法規」、判例「判例体系」、法関連文献情報「法律判例文献情報」など
機能 フリーワード検索の際のサジェスト機能
法令などへのブックマーク機能
利用料金 要お問い合わせ
その他 2週間の無料トライアルあり

リーガルリサーチの基本手順

リーガルリサーチは、経験や勘に頼る業務ではなく、適切な手順に沿って進めることで、漏れなく、かつ正確に結論へたどり着けます。ここでは、実務でそのまま使える基本の流れを整理し、調査の質を安定させるための「型」を紹介します。

事実関係・論点の整理

調査を始める前に、まずやるべきは“何を調べるべきか”の明確化です。ここが曖昧だと、情報収集に時間がかかり、判断材料も散漫になってしまいます。

依頼内容の分解

事業部から届く相談は抽象的なことが多いため、前提条件・目的・懸念点などを丁寧に分解します。「誰が・何を・どのように行うのか」を整理するだけでも、調査の方向性が明確になります。

調査すべき論点を特定する

前提を分解したら、関係しそうな法域(個人情報、労務、景表法、金融規制など)を洗い出します。ここで論点を絞りすぎず、関連しうる項目を幅広く見ておくことが重要です。

一次情報を特定する

論点が整理できたら、次に確認するのは信頼性の高い一次情報です。

まずは条文を確認し、定義・要件・例外規定を把握し、そのうえで、実務運用が示されているガイドラインや通達に広げていくと、論点の輪郭が鮮明になります。

判例の確認

条文やガイドラインだけでは判断が難しい場面も多くあります。そこで役立つのが、過去の裁判例です。

裁判所の判例検索システムでは、最新の判断傾向を追うことができます。特に新しいビジネスモデルに関連する論点では、近年の下級審の判断が実務上大きなヒントになります。

調査対象と完全一致する事案はほとんどないため、「要件が似ている事例」「争点が似ている事例」に注目しましょう。

結論とリスクの整理

集めた情報をそのまま並べるだけでは、事業部や上層部への説明には十分ではありません。最後に「結論をどう伝えるか」が重要です。

結論 → 法的根拠 → 実務上の影響 → 推奨対応
という流れでまとめると、ビジネス判断に活用しやすい情報を提供できます。

リスクだけを指摘するのではなく、実現可能なオプションも併せて提示することで、法務としての価値が高まるでしょう。

リーガルリサーチは正確さと効率化が鍵

リーガルリサーチは、企業法務にとってもっとも基礎でありながら、判断の質を大きく左右する重要な業務です。法令やガイドライン、判例といった一次情報を正しく押さえることが、契約書レビューや新規事業の検討、コンプライアンス対応の精度を高める土台になります。

一方で、調査には時間がかかりやすく、担当者の経験によって品質にばらつきが出やすいのも事実です。だからこそ、調査手順を「型」として身につけ、有料サービスを含めたデータベースの使い分けや調査のコツを理解することで、日々の業務はスムーズになります。

今日の業務で調べ物に迷っている方も、より確実な判断基盤を整えたい方も、ぜひ自社のリサーチ環境を一度見直してみてください。法務部門全体のスピードと品質を引き上げるヒントがきっと見つかるはずです。

この記事の監修者

山本 俊

GVA TECH株式会社 代表取締役
GVA法律事務所 創業者

山本 俊

弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にスタートアップとグローバル展開を支援するGVA法律事務所を設立。
2017年1月にGVA TECH株式会社を創業。AI法務アシスタント、法務データ基盤、AI契約レビュー、契約管理機能が搭載されている全社を支える法務OS「OLGA」やオンライン商業登記支援サービス「GVA 法人登記」等のリーガルテックサービスの提供を通じ「法とすべての活動の垣根をなくす」という企業理念の実現を目指す。

Xアカウント:@gvashunyamamoto

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