法務コラム
リーガルテックとは?主要分野や代表的なツールを網羅的に解説
投稿日:2025.11.06
契約書の作成やレビュー、法務相談の対応、コンプライアンス管理──。 企業の法務部門には膨大な業務が存在しますが、手作業による非効率な運用や属人性の高さが深刻なボトルネックとなっています。
こうした状況を変える手段として注目されているのが「リーガルテック(LegalTech)」です。
近年では法務のあらゆる領域で導入が進み、業務を効率化する必須のソリューションとなりつつあります。
この記事では、そんなリーガルテックの全体像から活用されている主要な領域、代表的なツールなどについて解説します。
目次
リーガルテックとは
まず最初に、リーガルテックの基本的な意味と背景、そして日本でどのように広がってきたのかを整理していきます。
リーガルテックの定義
リーガルテックとは、「法律(Legal)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた言葉で、テクノロジーを活用して法務業務を効率化する取り組みを指します。
AIによる契約書の自動レビュー、クラウドでの契約管理、電子契約システムの導入など、従来は人手に頼っていた作業をデジタル技術で支援します。
リーガルテックに注目が集まる背景
リーガルテックが注目されるようになった背景には、いくつかの社会的・技術的変化があります。
ひとつは、企業の法務業務の複雑化と人手不足です。M&Aや海外展開の増加、規制対応の強化などで法務領域は広がり続けていますが、専門人材の数は限定的で、適切な人材の確保は容易ではありません。
KPMGコンサルティング株式会社とトムソン・ロイター株式会社が共同で実施した調査では回答企業の7割以上が法務・コンプライアンス部門人材が不足しており、半数以上が法務人材の採用や育成に課題を感じていると回答しています。
また、AIやクラウドなどのテクノロジーの進化もリーガルテックの普及を強力に後押ししています。自然言語処理や機械学習の発展によって、契約書や法的文書を自動的に分析・分類できるようになり、実用に耐える段階に入ったことで一気に導入が進みました。
リーガルテックの広がり

リーガルテックの概念は2000年代初頭のアメリカで誕生しました。
個人や中小企業向けにオンラインで法律サービスを提供する LegalZoom(1999年設立) や Rocket Lawyer(2008年設立) などのベンチャー企業が急成長し、弁護士業務の一部をテクノロジーで効率化する流れが始まります。
その後、eディスカバリー(電子情報開示)ツールの登場、AIレビュー技術の商用化などを経て、リーガルテックは「法律サービスのデジタルトランスフォーメーション」を象徴する概念として定着しました。
日本におけるリーガルテック
日本でも2018年頃から「法務DX」や「AI契約書レビュー」という形で浸透し始め、国内発のリーガルテック企業が続々と台頭しています。
参考:
アメリカにおけるリーガルテックの現状(独立行政法人情報処理推進機構)
法務・コンプライアンスリスクサーベイ2024:持続可能な経営に向けた改革(KPMGコンサルティング株式会社)
リーガルテックの目的
リーガルテックの目的は単なる業務効率化にとどまりません。
人間の判断をより正確に、迅速に行えるよう支援し、法務を“経営の意思決定を支える存在”へと進化させることにあります。
つまり、リーガルテックは「法務を戦略的な領域へと変えるための基盤」と言えるでしょう。
リーガルテックの主要分野と代表的なツール
リーガルテックは、契約書レビューから法務相談、コンプライアンス管理まで、法務業務全体を支える幅広い領域で進化しています。
ここでは、GVA TECH『リーガルテックカオスマップ2025』の分類をもとに、主要な分野と代表的なツールを整理します。
※各サービスとも機能横断的なサービス拡充を進めていることから、いち分類内にとどまらない場合が多いです(例:電⼦契約サービスがワークフローや契約管理機能を搭載している、またはその逆など)。あくまで参考例としてご承知おきください。
| 主要分野 | 特徴 | 代表的なツール |
|---|---|---|
| AI契約書レビュー(リーガルチェック) | 契約書のドラフティング‧レビューをサポートするサービス | OLGA/LegalOn/LeCheck など |
| CLM(契約ライフサイクル管理) | 契約締結前後のプロセス全体(作成・審査・承認・更新等)をを管理するサービス | OLGA/ContractS CLM/MNTSQ など |
| 電子契約・署名 | 契約締結を電⼦的に⾏うサービス | クラウドサイン/DocuSign/GMOサイン など |
| 締結済み契約書管理 | 締結した契約書の格納や期限などを管理するサービス | OLGA/LegalForceキャビネ/Hubble など |
| 法務案件管理 | 事業部と法務の相談・受付・対応状況を可視化し、対応漏れを防止するサービス | OLGA/HighQ/LegalOn など |
| リーガルリサーチ | 契約書作成、レビューに関連する法律や判例、⾒解等を調査、参照するためのサービス | Westlaw Japan/LEGAL LIBRARY/TKCローライブラリー など |
| AIアシスタント | 法務関連の問い合わせ対応やナレッジ提示をAIで自動化するサービス | OLGA/Legal AI/LegalOn など |
| 翻訳 | 外国語契約の作成・レビュー時の翻訳業務を支援するサービス | DeepL/T-4OO/みらい翻訳 など |
| コンプライアンス管理 | 法令・社内規程の遵守とリスク低減のための統合管理を行うサービス | SafeBiz/RoboRoboコンプライアンスチェック/NAVEX One など |
| ※各サービスは機能拡張により複数カテゴリへ跨る場合があります(分類は参考)。 | ||
AI契約書レビュー(リーガルチェック)
AIが契約書の条文や文脈を解析し、リスク箇所の抽出や自社基準との照合を自動で行う分野です。
レビュー時間を短縮しながら、担当者ごとの判断ばらつきを抑えられるため、「スピードと品質の両立」を実現します。
特に契約審査件数が多い企業では、初期チェックをAIに任せることで、法務担当者は交渉やリスク分析といった高度業務に集中できます。
2022年にはAI契約レビューサービスが弁護士法第72条(非弁護士による法律事務の取扱い)に抵触するかどうかが大きな論点となったものの、同年法務省が「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」と題したガイドラインを公表。現在提供されているAIレビューサービスの多くは「最終判断をAIが行わない限り、非弁行為に該当しない」との見解が示されました。
その結果、法に準拠したAIリーガルチェック市場の展開が後押しされました。
参考:AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について(法務省)
AI契約書レビューの代表的なツール
OLGA AI契約レビュー(GVA TECH株式会社)/LegalOn(株式会社LegalOn Technologies)/LeCheck(株式会社リセ)/LawFlow(LawFlow株式会社)/freeeサイン 契約チェック(フリー株式会社)/クラウドサイン レビュー(弁護士ドットコム株式会社)
関連記事:
AIリーガルチェック(契約書レビュー)はどこまで使える?特徴や導入事例を解説
CLM(契約ライフサイクル管理)
契約書の作成から審査、承認、締結、更新・廃棄までを一元的に管理する仕組みです。
契約情報をデータ化することで、法務・営業・経理間の連携を強化し、契約を“経営資産”として活用できます。
CLMの代表的なツール
OLGA(GVA TECH株式会社)/ContractS CLM(ContractS株式会社)/MNTSQ(MNTSQ株式会社)/LIRIS CLM(株式会社リリス)/LegalOn(株式会社LegalOn Technologies)/
関連記事:CLM(契約ライフサイクル管理)とは?契約を資産化するための仕組みづくりを解説
電子契約・署名
電子契約は契約の締結をオンライン上で完結させる仕組みです。日本経済新聞の調査では、国内主要企業の8割近くがクラウド上で締結できる電子契約を導入しており、もっとも普及が進んでいるリーガルテックツールの一つといえます。
印紙税・郵送コストの削減、契約スピードの向上、監査対応の効率化など、法務・経理双方の業務改善につながります。
参考:リーガルテック、コロナ下で加速 電子契約導入8割に(日本経済新聞)
電子契約・署名の代表的なツール
クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)/DocuSign(ドキュサイン・ジャパン株式会社)/GMOサイン(GMOインターネットグループ株式会社)/Freee SIGN freeeサイン株式会社/Adobe Sign(アドビ株式会社)/マネーフォワードクラウド契約(株式会社マネーフォワード)
締結済み契約書管理
締結後の契約書をクラウド上で保管・共有し、更新期限や重要条項を自動で通知する分野です。
紙やExcel台帳での管理から脱却し、「契約情報をリアルタイムで追跡できる体制」を構築できます。
2022年の電子帳簿保存法(電帳法)改正をきっかけに、電子データでの契約書保存が実質的に義務化されたことから、この領域のツール導入が加速しました。
法令対応と内部統制を同時に実現できる点が評価され、監査・税務対応の基盤としても注目を集めています。
締結済み契約書管理の代表的なツール
OLGA(GVA TECH株式会社)/LegalForceキャビネ(株式会社LegalOn Technologies)/Hubble mini(株式会社Hubble)/MyQuick(インフォコム株式会社)/
法務案件管理
社内からの法務相談や契約レビュー依頼などを一元管理する分野です。
案件ごとのステータスや対応履歴を可視化することで、対応漏れや属人化の解消を実現することができます。
契約後は契約書管理システムと連携することで、過去案件の交渉の経緯などもデータベース化され、社内ナレッジとして再利用できる点も大きなメリットです。
法務案件管理の代表的なツール
OLGA(GVA TECH株式会社)/HighQ(トムソン・ロイター)/LegalOn(株式会社LegalOn Technologies)
関連記事:法務案件管理システムの導入ハードルは?対処法とともに解説
リーガルリサーチ
法令・判例・通達・ガイドラインなどの法情報をオンラインで検索・分析するためのツールです。
AI検索により、該当する条文や関連判例を高速で特定し、リサーチ工数を削減しつつ正確性を担保することができます。
法改正対応や新規事業検討時など、判断根拠の明確化にも役立ちます。
リーガルリサーチの代表的なツール
Westlaw Japan(ウエストロー‧ジャパン株式会社)/LEGAL LIBRARY(株式会社Legal Technology)/TKCローライブラリー(株式会社TKC)/BUSINESS LAWYERS LIBRARY(弁護士ドットコム株式会社)/Legalscape(株式会社Legalscape)
関連記事:リーガルリサーチとは?メリットと国内の6サービスをご紹介
AIアシスタント
法務部門や事業部門の質問にAIが自動応答する仕組みです。
社内ナレッジベースと連携してFAQや契約ひな形を提示するなど、日常的な問い合わせ対応を自動化し、法務担当者の負担を軽減します。
AIアシスタントの代表的なツール
OLGA(GVA TECH株式会社)/Legal AI(株式会社Legal AI)/LegalOn(株式会社LegalOn Technologies)
翻訳
英文契約書を始めとした海外取引用文書を翻訳するツールです。
法律文書特有の文体を学習したエンジンを採用することで、専門性とスピードを両立できるようになっています。
翻訳の代表的なツール
DeepL(DeepL SE)/T-4OO(株式会社ロゼッタ)/みらい翻訳(株式会社みらい翻訳)/YarakuZen(八楽株式会社)
コンプライアンス管理
社内規程・リスク情報・法令改正対応などを一元的に管理する領域です。
法改正モニタリングやリスクスコアリングなど、AIによる予防的ガバナンス強化が進んでいます。
コンプライアンス管理の代表的なツール
SafeBiz(株式会社サイバーセキュリティクラウド)/RoboRoboコンプライアンスチェック(株式会社RoboRobo)/NAVEX One(NAVEX Global)/LexisNexis ASONE(レクシスネクシス・ジャパン株式会社)/Deloitte GRCツール(有限責任監査法人トーマツ)
法務OS「OLGA」で法務オートメーションを実現!
GVA TECHが提供する「OLGA(オルガ)」は、法務業務に関するあらゆる情報を一元化し、案件処理の自動化を実現するために設計されたシステムです。
契約審査、相談受付、承認、締結、ナレッジ共有まで、法務に関わるプロセスをシームレスにつなぎ、チーム全体の生産性を高めます。

OLGAは、この記事で紹介した主要なリーガルテック分野である、
・CLM(契約ライフサイクル管理)
・法務案件管理
・AI契約書レビュー
・契約書管理
・AIアシスタント
といった機能を備えており、さらに主要な電子署名ツール(クラウドサイン、DocuSign、GMOサインなど)とも連携可能です。
これにより、複数のツールにまたがりがちな契約審査プロセスをひとつのプラットフォーム上で完結。対応漏れ防止、ナレッジ共有、リードタイム短縮といった法務の主要課題を解消します。
法務DXを部分最適ではなく、“全体最適”として推進したい企業にこそ最適なソリューションです。
リーガルテック導入時の注意点
リーガルテックは法務業務を大きく変える力を持っていますが、導入すればすぐに効果が出るわけではありません。
重要なのは、まず自社の法務業務を正しく理解し、課題を明確にすることです。
たとえば、契約書テンプレートの整備や承認フローの見直しで十分に改善できるケースもあれば、リーガルテック導入が効果的なケースもあります。
大切なのは、安易にツールに飛びつくのではなく、業務全体のボトルネックを可視化し、根本的な課題解決に合ったソリューションを選ぶ姿勢です。
既存のプロセスを整理して「土台」をつくり、その上でテクノロジーを組み合わせていくことで、初めて法務業務全体の最適化が実現します。
リーガルテックは、そうした仕組みの上に成り立つ“強力な推進力”としてとらえるようにしましょう。
関連記事:法務業務を効率化するためのアプローチ|法務の課題を解決するリーガルオペレーションズとは?
リーガルテックで法務をより戦略的な存在へと進化させる
契約レビューのスピード向上、リスク管理の精度強化、ナレッジ共有の促進など、リーガルテックがもたらす効果は多岐にわたります。
大切なのは、「自社の課題を正しく見極め、最適な解決策を選ぶこと」。
課題のボトルネックを把握し、それに合ったリーガルテックを導入すれば、法務部門は確実に変わります。
リーガルテックを活用し、法務をより戦略的な存在へと進化させましょう。


