法務コラム
グループ法務の案件管理はなぜ複雑になる?子会社からの依頼を効率化する方法
投稿日:2026.09.08

本社の法務部門でグループ会社からの依頼をまとめて受け付けていると、案件が増えるほど「あの件どうなりました?」という進捗確認や、担当者への個別確認が増えていきます。また、依頼経路もメール、チャット、電話などに分かれ、過去の経緯を追うだけで時間がかかることもあります。
こうした状況は、担当者の管理が甘いから起きるわけではありません。グループ会社の案件にも対応する法務部門では、関係会社ごとに依頼方法や判断の前提が異なり、どうしても管理が複雑になっていきます。
今回は、グループ会社からの法務依頼を安定して管理するために、まず運用でできることを整理したうえで、どのタイミングから「仕組み」で支えるべきなのかを考えていきます。
グループ会社の法務案件管理が複雑になりやすい理由
法務案件管理とは、契約書レビューや法律相談など、法務部門に寄せられる案件について、依頼内容、担当者、期限、進捗、関連資料などを案件単位で管理することです。
本社法務が複数のグループ会社を支援する場合には、これに「どの会社からの依頼なのか」「どのルールや過去事例を踏まえて判断したのか」といった情報も加わるため、単一企業内の案件管理より複雑になりやすくなります。
グループ会社からの依頼に対応していると、子会社ごとに依頼方法や情報の粒度が異なり、その都度内容を整理する必要が出てきます。
また、過去に類似案件があっても対応履歴をすぐに参照できず、毎回ゼロから確認しているケースも少なくありません。

これらは個人の対応の問題というより、相談経路や管理方法が分散しやすいグループ法務の構造上自然と起きやすい課題といえます。
グループ会社の法務案件管理で起こりやすい3つの課題
ではなぜこうした状況が生まれるのかを、構造の観点から整理してみます。
まず1つ目が、依頼の入口が統一されていないことです。法務の共有メールアドレスや個人メール、チャットや電話、直接の相談など様々な形で依頼が入ってくる状況では、案件の整理や把握に手間がかかりやすくなります。検索という観点でも、必要な情報がどこにあるのかわからず、膨大なメールの履歴を1つずつ遡って読み込んだ、という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2つ目が、工数や負荷の状況が見えにくいことです。どのグループ会社にどれだけの対応工数がかかっているのか、案件数や担当者ごとの負荷も正確に把握しづらくなります。そのため適切なリソース配分や、必要に応じた増員・採用の判断が難しくなり、組織としての対応状況を定量的に捉えることも難しくなってしまいます。
3つ目が、回答の方針が揃いにくいということです。本社の規程に基づいて判断するケースと、子会社ごとの商習慣を踏まえて判断するケースが混在するため、過去にどう対応していたかを都度確認する必要が出てきてしまいます。

案件数そのものが問題なのではなく、情報が一元化されない構造のまま案件数が増えることで、管理負担が比例するように増えていく。この点が、グループ法務の案件管理を考えるうえで重要です。
法務案件管理を効率化するために、まず運用でできる3つのこと
すぐにシステムを導入しなければならないわけではありません。案件数が少なく、関係者もある程度限られている場合は、既存の環境のままでも改善できることがあります。
まず取り組みやすいのが、依頼方法を統一することです。メールやチャットなど窓口を一つに決め、依頼テンプレートを用意して、最初に受け取る情報の粒度を揃えます。
次に、Excelなどの案件台帳でステータス・担当者・期限を一元管理し、更新ルールを決めます。そして、案件ごとの責任者だけでなく、グループ会社ごとの窓口担当も明確にしておくと、誰がどの会社を担当するのか迷いにくくなります。
案件数が少なく、やり取りの相手が固定され、運用ルールを継続して守れるメンバーが揃っている環境であれば、追加コストをかけずに十分機能するケースもあります。
Excelなどによる法務案件管理は、案件数やグループ会社が増えると限界がくる
一方で、案件数やグループ会社が増える、担当者が異動になるといった変化が起きると、台帳を更新すること自体の業務負担が重くなり、更新が追いつかなくなったり、引き継ぎのたびに過去の経緯を確認したりする必要が出てきます。
人数を増やしても、管理の仕組み自体が変わらなければ、忙しさが分担されるだけで「全体が見えにくい」という問題は残ります。結果として、管理工数が増え、本来時間を使いたい法務判断が圧迫され、情報の属人化やナレッジの散逸も進みやすくなります。マネージャーにとっても、案件の偏りや負荷を把握しづらくなり、全体をコントロールするための材料が不足します。
グループ会社の法務案件を一元管理する仕組みに必要な3つの条件
運用の限界を超えてきたときに考えたいのは、個々のやり方をさらに細かく整えることではなく、「やり方が整っている状態」を仕組みとして作ることです。具体的には、次の3つの状態を実現することがポイントになります。
- 依頼方法が統一され、必要な情報が揃った状態で案件を受け付けられる
- 進捗が可視化され、必要な人がいつでも状況を確認できる
- 案件ごとの対応履歴が残り、過去の知見を次の案件で再利用できる
この3つが仕組みとして実装されると、運用ルールを人が意識して守り続けなくても、案件管理が自然に整いやすくなります。ここからは、その実装方法の一例として、法務オートメーション「OLGA」を使ったグループ法務の案件管理をご紹介します。
子会社に法務部門がない場合は、本社法務で依頼と進捗を一元化する
まず、グループ会社に法務部門がなく、本社法務がまとめて対応するケースを考えてみます。このような体制で案件管理を仕組み化するときに重要なのは、法務側の管理を効率化するために、子会社側の業務負担を増やしすぎないことです。
新しい管理システムを導入しても、子会社側で新たなアカウントの発行や操作方法の習得が必要になると、結局メールやチャットなど従来の依頼方法に戻ってしまう可能性があります。
OLGAでは、子会社側はアカウントを持たず、専用の依頼フォームから法務案件を送信できます。契約書レビュー、法律相談など依頼内容に応じて入力項目を変えられるため、法務部門が案件を受け付けた時点で、対応に必要な情報をある程度揃えた状態を作ることができます。

依頼後のやり取りも、メールやSlack、Teamsなど普段使っているコミュニケーションツールを継続して利用できます。依頼者側の業務フローを大きく変えずに、法務側では案件の入口を一つにまとめられるのがポイントです。
また、依頼フォームから送信された内容はそのまま案件として登録され、担当者・期限・ステータスなどの情報と合わせて管理されます。
Excelなどへ案件情報を転記して更新する運用では、案件数が増えるほど台帳更新作業そのものが負担になります。受付と同時に案件管理へ反映される仕組みにしておけば、「依頼を受ける作業」と「案件を管理する作業」を分けずに済むため、管理工数を抑えやすくなります。

個別の案件ページには、案件の概要だけでなく、契約書のバージョン、法務部内のやり取り、依頼者とのメッセージ、顧問弁護士とのメールなどもまとめて紐づけられます。必要な情報を探すためにメールを遡ったり、ファイルサーバーから最新の契約書を探したりする時間を減らせる点も、案件数が増えたときには大きな意味を持ちます。

グループ会社ごとに法務担当者を決めている企業であれば、その割り当てルール自体を仕組みに反映することもできます。たとえば、子会社Aからの依頼は担当者A、子会社Bからの依頼は担当者Bという形であらかじめ設定しておけば、依頼受付の段階で担当者を自動的に割り当てることができます。
こうした仕組みを組み合わせることで、依頼の受付・案件登録・担当者設定・進捗管理を一連の流れとして管理できるようになります。
子会社に法務部門がある場合でも、本社が統括・支援する運用も可能
グループ会社にもそれぞれ法務部門がある場合は、各社の法務が自社案件に対応しながら、必要に応じて本社法務がグループ全体を統括・支援する形が考えられます。
この運用でポイントになるのは、すべての案件情報を全員に公開するのではなく、各社の独立性を保ちながら、必要な範囲で情報を共有できる状態をつくることです。

OLGAのチーム機能では、子会社や部門ごとに案件ボードを分けることができます。
たとえば、子会社Aの法務担当者には子会社Aの案件だけを表示し、子会社Bの担当者には子会社Bの案件だけを表示する一方、本社法務のマネージャーは複数の案件ボードを確認するといった運用が可能です。
別チームの案件についても、「閲覧・編集」「閲覧のみ」「非表示」といった形で権限を設定できるため、グループ各社の役割や情報管理方針に応じて閲覧範囲を調整できます。
また、子会社法務だけでは判断が難しい案件を、本社法務へ共有して対応を依頼することもできます。その際、これまでの対応履歴や依頼者とのやり取りを引き継いだ状態で共有できれば、本社側も最初から事情を聞き直すのではなく、続きから対応しやすくなります。
グループ4社の契約管理を一元化したEPG株式会社の事例
EPG株式会社では、グループ4社の法務案件や契約書情報をOLGAに集約し、それまでExcelや複数のツールに分散していた管理を一元化しました。その結果、契約管理にかかる工数は従来の約3分の1まで削減されています。
グループ会社ごとに異なる案件を扱う場合でも、情報を共通の基盤に蓄積することで、進捗確認や過去案件の検索にかかる負担を減らしやすくなります。
関連記事:グループ4社の契約管理を一元化し、管理工数を3分の1に削減したEPG株式会社の導入事例
案件管理の手間を減らし、法務判断に集中できる状態へ
グループ法務の案件管理で目指したいのは、単に台帳をきれいにすることではありません。「あの件どうなりました?」という確認に都度対応しなくても、必要な人が自分で状況を把握できる状態を作ることです。
案件登録や台帳更新の手間が減れば、法務担当者はより本質的な判断に時間を使いやすくなります。マネージャーは全体の案件数や担当者の負荷を見ながら配分を調整でき、過去の対応履歴が蓄積されれば、同じような案件で毎回ゼロから考える場面も減らしていけます。
今の管理方法で「担当者に聞かないと分からない」「台帳の更新が追いつかない」「過去案件を探すのに時間がかかる」といった状況が増えているのであれば、まずはどこで情報が分散し、どの作業が人の手に依存しているのかを整理してみることが重要です。
運用で改善できる部分と、仕組みで支えるべき部分を切り分けることが、グループ法務の案件管理を安定させる第一歩になります。
この記事は、2026年5月22日に開催したオンラインセミナー「子会社からの『あの件どうなりました?』をゼロに。グループ全体の案件進捗を可視化する法務マネジメント術」の内容をもとに、コラム形式に再構成しています。
