伯東株式会社

事業内容

  • エレクトロニクス関連事業
  • ケミカル関連事業

従業員規模

1,000名~

お話を伺った方

法務部 ビジネス法務グループ グループ長
内田 諭 様
デジタル戦略推進部 DX推進グループ スペシャリスト
浅田 晋吾 様

#契約審査の効率化

#10名以上の法務部門の事例

#AI コンサルティングの事例

#AI活用

伯東様_エントランス

掲載日:2026.08.17

半導体や電子部品を中心に、商社機能とメーカー機能の双方を持つ伯東株式会社。半導体需要の急拡大を背景に法務への相談も増えるなか、業務効率化の必要性に迫られていました。

そんな中で、OLGA AIコンサルティングを活用し、自社のひな形や過去の審査結果をもとにNDAの判断基準をプレイブック化。AIが修正履歴やコメントを付けたファーストドラフトを作成する仕組みを、実際の契約審査プロセスへ組み込みました。

導入後は、英文NDAで約2時間かかることもあったファーストドラフトの作成が約10分に短縮されています。今後はNDAの事業部完結化や海外拠点への展開も視野に入れています。

この記事ではAIを業務プロセスの一部として定着させた同社の取り組みについて伺いました。

伯東様_OLGA AIコンサルティング導入前の課題と導入後の効果

商社とメーカー、2つの機能を持つ伯東株式会社

──まずは、御社の事業概要について簡単にお聞かせください。

内田様:
当社は、半導体や電子部品を中心に扱う専門商社です。一部では化粧品などの自社ブランド商材を開発・生産し、販売するメーカー機能も持っています。商社とメーカー、両方の機能を持っている点が当社の特徴です。

──現在の法務体制と、担当されている業務について教えてください。

内田様:
法務組織は、契約審査を担当するビジネス法務グループ、コンプライアンス関係を担当するコーポレートグループ、安全保障貿易管理を担当するグループに分かれています。全体では12名ほどです。

ビジネス法務グループは私を含めて4名ですが、庶務を担当するメンバーも含んでおり、契約審査の実務を中心的に担う人員は限られています。人員を増やしたい考えはあるものの、法務人材の採用は簡単ではなく、少ない人員での案件をこなしていく必要がある状況です。

契約審査や法務相談は、月に90件ほどあります。契約類型としては、NDAのほか、取引基本契約や代理店契約が多く、海外拠点から英文契約の相談を受けることもあります。また、お客様とのトラブル対応や、新しいビジネスのリスクに関する相談も寄せられます。

月約90件の依頼のうち、約3割を占めていたNDA

──AIコンサルティングの導入前は、どのような課題を抱えていましたか。

内田様:
対応している契約類型のうち、秘密保持契約(NDA)が約3割を占めていました。NDAはもちろん重要ですが、限られた人数で契約審査を行うなか、NDAにかけている工数とリスクのバランスが良くないのではないかという課題意識を以前から持っていました。

取引基本契約や紛争対応など、より複雑でリスクの高い案件も抱えており、定型的に判断する要素の多いNDAの工数を減らし、そうした案件に人を割きたいと考えていました。

──当時、AIはどのように活用されていたのでしょうか。

内田様:
社内では、複数のAIモデルを利用できる環境がすでに用意されていました。法務でも、新しいビジネスの概要を入力し、「どのようなリーガルリスクがありそうか」と壁打ちする用途などには活用していました。

レビューにおいても参考にしていましたが、汎用的な生成AIは指摘を出してくれても、実際の契約書を修正し、修正履歴やコメントを付けたWordファイルを作るところまでは担ってくれません。AIから得た情報と、実際の契約審査業務は切り分けており、レビュー自体は従来どおり人が行っていました。

数分で修正履歴付きの契約書が出力されたことが検討のきっかけに

──OLGAのAIコンサルティングを検討したきっかけを教えてください。

内田様:
GVA TECHから提案をいただいたことがきっかけです。もともと、AIを使った契約審査はいずれ検討することになるだろうと考えていました。ちょうどNDAの審査工数を減らしたいという課題もあり、すでにSaaSとしてのOLGAを利用していたことから、既存業務との親和性も高いのではないかと考えました。

Word上に自動生成された修正履歴とコメントのイメージ

▲Word上に自動生成された修正履歴とコメントのイメージ。単なるリスク指摘にとどまらず、条文レベルでの修正案まで提示

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──従来の生成AI活用と、今回の取り組みにはどのような違いがあると感じましたか。

浅田様:
大きな違いは、生成AIが業務プロセスの中に組み込まれていることだと思います。LLMを壁打ちに使うだけでは、実際の業務ではコピー&ペーストや転記が残り、活用が「点」で終わってしまいます。この点、今回のコンサルティングで実装支援して頂いたレビュープロセスでは、契約書の比較からプレイブックに沿った判定、修正履歴・コメントの生成、Wordへの反映までが一気通貫で完結するため、AIの出力がそのまま次の工程につながる仕組みになっています。

──実際のデモをご覧になって、どのような点を評価されましたか。

内田様:
デモでは、当社のひな形と相手方の契約書を比較してAIを動かしてもらいました。すると、4〜5分ほどで修正履歴やコメントが付いた契約書が出てきました。

これまで展示会などでさまざまなリーガルテックを見てきましたが、一般的なリスクを指摘するものはあっても、修正案をこれほど高い精度で契約書に反映するものは見たことがありませんでした。「これなら実際の審査に使えそうだ」と感じたことが、検討を進める大きなきっかけになりました。

社内稟議もスムーズに進み、対話を通じてプレイブックを構築

──導入にあたっての社内稟議や予算確保は、どのように進みましたか。

内田様:
追加予算の申請は必要でしたが、社内ではAIを必要な投資と捉える雰囲気があり、承認自体は比較的スムーズでした。
費用対効果を説明する資料は用意しましたが、それほど大きな抵抗もなく通りました。
法務部門での取り組みを先進事例として、全社のAI活用につなげていきたいという期待も背景にあったと思います。

──DX推進のお立場からは、どのような印象を受けましたか。

浅田様:
今回の仕組みは、AIが契約書を確認し、判断基準に沿って修正案やコメントを作り、業務の次の工程へつなげられます。
自然言語を扱うAIを、ワークフローのパーツとして人の業務プロセスに組み込める点は、他部門の業務にも展開できる先行事例としても非常に可能性が大きいと感じました。当社で生成AIが本業務のプロセスにまで入り込んだのは、法務が初めてです。

──自社の審査基準は、どのようにプレイブックへ落とし込んでいったのでしょうか。

内田様:
当社からは、日本語と英語の自社ひな形に加えて、相手方から提示されたNDAを過去にどのように修正し、どのような内容で締結したかが分かる資料を提供しました。修正の有無や交渉回数などが異なる複数のパターンを用意しています。

それらを見ていただくことで、単に自社ひな形との差分を確認するのではなく、当社がどのような考え方で条文を修正しているのかを読み取り、プレイブックへ反映してもらいました。完成したプレイブックの内容にも納得感があり、やり取りはスムーズでした。

──実装にあたって、調整が必要だった点はありますか。

浅田様:
既存の文書管理環境との連携については、当社の環境と用意されていた手順に一部差異があり、何度か打ち合わせを行いました。ただ、大きなトラブルというよりは、当社のテナント環境に合わせて接続方法を確認していく作業でした。

双方で手順を確認しながら進めたことで、実際の保管環境に合わせた形で運用を開始できています。

レビュー工数が全体で5分の1に。英文NDAは2時間から10分へ

──現在は、どのような形で運用されていますか。

内田様:
現在は法務部門のメンバーにアカウントを付与し、NDAの審査では原則として今回のプロジェクトで構築されたフローを利用する運用にしています。契約書を投入すると、プレイブックに沿った修正案、修正履歴、社内向けのコメントなどが出力されます。

担当者はゼロから初稿を作るのではなく、まずAIの出力を確認し、必要に応じて案件固有の事情を反映して修正します。Wordの修正履歴も付いた状態で出てくるため、作業量はかなり減りました。

──導入後、審査時間にはどのような変化がありましたか。

内田様:
レビューにかかる時間は大幅に短縮され、体感としては5分の1ほどになりました。中でも効果が特に大きいのが英文契約です。英文NDAをきちんと読みファーストドラフトを作成するには、従来2時間ほどかかることもありました。それが現在は10分ほどで完了します。

もちろん、その後に人が内容を確認し、手直しする時間は必要です。ただ、最初から全文を読み込んで修正案を作る必要がなくなったため、全体の時間は大きく削減できています。

──アウトプットの品質はどのように評価していますか。

内田様:
時間が短くなっても、精度は従来と同じ水準を保てていると感じています。同じプレイブックを通して初稿が作られるため、担当者によって大きくばらつきにくい点も気に入っています。

一方で、準拠法をどこまで修正するか、取引上の力関係を踏まえて何を受け入れるかといった判断は、案件ごとの背景によって変わります。この点はAIの出力をそのまま採用するのではなく、人が確認して必要な調整を加えるようにしています。

──今後、さらに運用を改善したい点はありますか。

内田様:
プロンプトによって、AIの出力には多少違いが出ると感じています。どのような背景情報を入れると、より案件に合った結果が得られるのか、現在いろいろなパターンを試しています。良いアウトプットが得られた入力方法を記録し、担当者間で共有できるようにすることが次の課題です。プロンプトの型を整備できれば、さらに品質を安定させられると思います。

NDAを事業部で完結させ、法務は重要案件へ集中する体制へ

──今後、NDA審査をどのような形にしていきたいと考えていますか。

内田様:
次の段階として、NDAはできるだけ事業部門で完結させたいと考えています。当社は商社という性質上、自社ひな形を提示するよりも、お客様から相手方のひな形を提示されるケースが多くあります。

まず事業部門がAIで契約書を確認し、カウンター案を作成する。それで交渉がまとまれば法務は入らず、条項の意味が分からない場合や交渉が難航した場合に法務へ相談してもらう運用をイメージしています。

法務側では、契約の基本的な考え方を説明する研修やQ&Aなどで補完し、事業部門が一定の範囲まで自分たちで対応できる環境を作りたいです。そうすることで、法務は本当にリスクの高い案件へ集中できます。

また海外拠点への展開も検討しています。現状だと、現地の駐在員が、本社へ回す時間がないなか、各国のリソースを活用して英文や中国語の契約書になんとか対応しているケースがあります。そうしたときに、まずAIへ契約書を通すだけでも、見落としのリスクは変わってきます。現地で一次確認を行い、難しい案件だけを本社法務へ上げる運用ができれば、海外拠点のリスク管理にもつながると思います。

法務で確立したAI活用を、「守りのDX」の皮切りに

──今回の取り組みを踏まえて、法務以外の部門へのAI活用はどのように展開していきたいですか。

浅田様:
今回の取り組みをきっかけに、社内で生成AIやワークフロー構築基盤を利用するための環境が整いました。今後はさらに間接部門の業務改善にも展開していきます。

特に、自然言語を扱い、一定のルールやナレッジを参照して判断する業務は、法務と同じような仕組みで一般化できる可能性があります。安全保障貿易管理、CSR、内部監査などへの横展開を考えています。

当社では、こうした間接部門の業務改革を「守りのDX」と捉えています。法務を皮切りに、生成AIを実際のプロセスへ組み込み、人が判断すべき業務へ時間を振り向けられる環境を作っていきたいです。

伯東様画像_応接室内に併設されている茶室

▲応接室内に併設されている茶室

──最後に、法務領域でAI活用を検討している企業へメッセージをお願いします。

内田様:
10年後には現在のような契約審査業務の多くはなくなっていると思っています。AIが契約書を確認し、重要な論点を浮き彫りにした上で、最後は交渉や意思決定だけを人が担う形になるのではないでしょうか。

そうなると、法務のあり方も変わらなければなりません。新規事業や新しい産業を会社が作っていく段階から法務が入り、事業戦略や数値なども理解しながら伴走する必要があります。M&Aなども含め、経営により近い役割になっていくと思います。

定型的な審査にかかる時間を減らし、より重要な業務へ集中したい企業はOLGAのAIコンサルティングを検討してみる価値があるのではないでしょうか。

浅田様:
今後、AIを使いこなすことは業務から切り離せなくなると思います。法務はリスクを意識するからこそAIを避けたくなる面もあると思いますが、もう使わずに済ませられる状況ではありません。

使える道具は積極的に取り入れ、時間を有効に使うことが、業務品質を上げることにもつながります。AIをチャット画面で使うだけで終わらせず、実際の業務プロセスへ組み込むことを恐れずに進めることが重要だと思います。

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