投稿日:2026.10.28

秘密保持契約(NDA)の有効期間は何年?一般的な期間・自動更新・存続条項を解説

秘密保持契約(NDA)の有効期間に、法律上の一律の決まりはなく、取引の期間や、開示する情報の価値がいつまで続くかを踏まえて決める必要があります。

また、契約書に「有効期間は1年間」と書かれていても、自動更新条項によって契約期間が延長されたり、存続条項によって契約終了後も秘密保持義務が続いたりすることもあります。

この記事では、NDAの期間の考え方から、契約期間と存続期間の違い、自動更新・無期限とする場合の注意点、条文の確認ポイントまで解説します。

NDA(秘密保持契約)の有効期間は何年が一般的?

先述した通り、NDAの有効期間に、すべての取引に共通する標準年数はありません。「契約期間を1年間とし、必要に応じて更新する」「契約終了後も秘密保持義務を3年間存続させる」といった設定例はありますが、契約期間と秘密保持義務の存続期間では、年数を決める際の着眼点が異なります。

一般的な年数を探すときは契約期間と存続期間を区別する

期間設定の参考として、経済産業省・特許庁のモデル契約書「OIモデル契約書ver2.2(新素材編)(2025年4月改訂)」では、契約期間を1年間とし、契約期間中に開示された秘密情報について、契約終了後も3年間、一定の規定を適用する例が示されています。解説では、契約終了後の秘密保持義務の存続期間は2~3年とすることが多いものの、事業や情報の性質に応じた調整が必要とされています。

ただし、このモデルはスタートアップが事業会社に新素材の技術情報を開示する特定の場面を想定しており、すべてのNDAに同じ年数が適しているわけではありません。

1年・3年・5年という数字を比較するときも、まず「いつから数える期間なのか」「何を保護するための期間なのか」を確認しましょう。

有効期間は秘密情報の性質や取引期間を踏まえて決める

契約期間は、情報のやり取りが続く見込みの期間に合わせて設定し、「契約締結日から1年間」と定めたり、具体的な終了日を指定したりする方法があります。また、秘密保持義務の存続期間は、情報がいつまで事業上の価値を持つかを踏まえて検討します。

たとえば、発売前の製品に関する情報は、発売の前後で保護の必要性が変わることがある一方、製造方法や独自のノウハウは、取引終了後も長く価値を持つ可能性があります。同じ技術情報でも、すぐに陳腐化する情報と、長く競争力の源泉になる情報では、必要な保護期間が異なります。

当初の商談から共同開発へ進み、開示する情報の範囲が広がる場合にも注意が必要です。取引の段階が変わったときは、期間だけでなく、秘密情報の定義や利用目的も見直しましょう。

参照:OIモデル契約書ver2.2(新素材編)秘密保持契約書(2025年4月改訂)(特許庁)

契約期間と秘密保持義務の存続期間は分けて考える

NDAでは、契約そのものが有効な期間と、契約終了後も秘密保持義務などが続く期間を分けて定めることがあります。さらに自動更新がある場合は、当初の満了日を過ぎても契約が続くため、有効期間の条項だけで判断しないことが大切です。

項目 意味 設定例
契約期間 NDAそのものが有効な期間 契約締結から1年間
存続期間 NDA終了後も指定した義務や条項が効力を持つ期間 秘密保持義務が契約終了後3年間続く
自動更新 所定の期限までに更新拒絶等の通知がなければ契約期間を更新する仕組み 同じ条件で1年ごとに更新

たとえば、「契約期間は1年間。ただし秘密保持義務は契約終了後3年間存続する」と定めた場合、更新せずに契約が終了しても、対象となる秘密情報については、その後3年間、秘密保持義務が続きます。

「契約期間」と「存続期間」の違い。契約締結から契約終了までが契約期間(有効期間)、契約終了から存続期間の満了までが存続期間で、指定した義務・条項だけが残る

存続期間を契約終了日から数える定めの場合、自動更新によって契約終了日が後ろに延びると、存続期間の起算点も後ろにずれます。管理上は、契約の満了予定日と、義務が終了する予定日を分けて把握しておくとよいでしょう。

存続条項とは

存続条項とは、契約終了後も特定の義務や条項の効力を残すための規定です。NDAでは、秘密情報を第三者に開示しない義務や、定められた目的以外に使用しない義務などを対象にすることがあります。

重要なのは、契約終了後も守ってもらいたい内容を具体的に定めることです。なお、契約が終了しても、別の契約や法令によって使用・開示が制限される場合があるため、受け取った情報を自由に開示・利用できるとは限りません。たとえば、情報が不正競争防止法上の「営業秘密」に当たる場合、一定の不正な使用・開示は、同法に基づく差止めや損害賠償請求の対象となり得ます。

参照:営業秘密~営業秘密を守り活用する~(経済産業省)

どの義務をどのくらい存続させるか確認する

存続条項では、秘密保持義務、目的外使用の禁止、返還・廃棄、損害賠償、差止め、紛争解決などについて、終了後も適用する必要があるかを確認します。すべてを同じ年数で残すのではなく、各条項の役割に応じて期間を検討します。秘密保持と目的外使用の禁止が別々の条項に定められている場合は、両方が存続条項の対象になっているか確認しましょう。

条番号によって存続対象を指定する場合は、契約書を修正した際の参照ずれにも注意しましょう。たとえば、第3条が「目的外使用の禁止」であっても、その前に条項を追加すると、第3条が別の内容に変わることがあります。

「第3条(目的外使用の禁止)」のように見出し名も併記すると確認しやすくなりますが、条番号の修正自体が不要になるわけではありません。条項を追加・削除したときは、条番号だけでなく項番号も含めて、存続条項の参照先を見直す必要があります。

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NDAを自動更新、延長する場合の注意点

自動更新条項とは、期間満了前の一定期限までに当事者から更新を拒絶する通知などがなければ、契約期間を更新する規定です。たとえば、「期間満了の1か月前までに、いずれの当事者からも更新を拒絶する通知が相手方に到達しなければ、同じ条件でさらに1年間更新する」といった形で定めます。

継続的に情報をやり取りする取引では、更新のたびに契約を締結し直す手間を減らせます。

一方、商談が終了していても、所定の通知をしなければ契約が更新されることがあるため、自動更新の有無と、更新を止めるための手続きをあわせて確認しましょう。

更新を止める場合の通知期限と方法を確認する

自動更新条項では、「満了の何か月前までに通知するか」「誰に通知するか」「どのような方法で行うか」が重要です。

通知期限の直前に慌てて判断しなくて済むよう、期限より前に社内の確認日を設定し、取引の継続予定や情報開示の状況を確認しておくとよいでしょう。通知の発送日と相手方への到達日を区別し、期限の判断を誤らないようにすることも大切です。

中途解約の規定と存続条項の整合性を確認する

契約期間や自動更新を定めていても、別の条項で中途解約が認められている場合、満了前に契約が終了することがあります。中途解約を認めること自体が問題なのではなく、終了した場合にも必要な情報保護が続くかが重要です。

存続条項が「契約期間満了後」とだけ書かれている場合には、中途解約や契約違反による解除の場合も対象になるのか確認しましょう。契約終了の理由によって保護に抜けが生じないよう、終了条項と存続条項をあわせて見直す必要があります。

合意によって延長する場合は変更内容を明確にする

自動更新条項がない場合でも、当事者が合意して契約期間を延長することは可能です。延長する際には、新しい満了日、そのほかの条件の変更の有無、存続期間の起算点への影響を確認し、合意内容を書面などに残しておきましょう。

契約がいったん終了してから情報のやり取りを再開する場合には、契約終了後、再締結までに開示された情報をどの契約で保護するかも検討が必要です。継続予定がある場合は、満了前に延長や再締結を判断しておくと、保護の範囲を整理しやすくなります。

NDAを無期限にすることはできる?

NDAの期間を無期限とする設計は考えられますが、「契約そのものを無期限とすること」と「契約終了後の秘密保持義務を無期限で存続させること」は別です。

どの情報を対象とし、どの義務を残すかを明確にすることが大切です。

情報の性質と管理負担を踏まえて検討する

すべての秘密情報を一律に無期限で保護することが適しているとは限りません。受領側には、管理対象を長期間把握し、担当者が変わっても義務を引き継ぐ負担が生じます。受領側の責任によらず情報が公知になった場合などに秘密情報の対象から外れるかどうかも、あわせて確認しましょう。

また、秘密保持義務が続くからといって、受け取った資料をすべて保管し続ける必要があるとは限りません。契約上の返還・廃棄義務に従って資料を返還・廃棄しても、その資料に含まれていた秘密情報について秘密保持義務が続く設計は可能です。

個人情報を含む場合は、NDAの期間だけで扱いを決めず、利用目的や安全管理など、個人情報保護法上の義務との関係も確認する必要があります。

開示側・受領側で有効期間に対する考え方は異なる

NDAの期間を調整する際には、自社が主に情報を開示する側なのか、受け取る側なのかも確認しましょう。双方が情報を開示する契約では、自社がどちらの立場にもなることを踏まえて検討します。

開示側は情報の価値が続く期間の保護を考える

開示側にとっては、情報の流出や目的外使用による影響を防ぐことが重要です。取引が終了した後も価値が残る情報については、契約期間を長くするだけでなく、秘密保持義務や目的外使用の禁止を存続させる方法を検討します。

ただし、期間を長く設定するだけでは十分ではありません。秘密情報の範囲や利用目的を明確にし、必要な範囲で情報を開示することも、保護の実効性を高めることにつながります。

受領側は管理可能な範囲と期間かを確認する

受領側は、長期間の情報管理に伴う負担や、義務違反のリスクを考慮します。必要以上に広い情報を長期間管理する義務になっていないか、対象となる情報と期間を確認しましょう。

期間を短くする交渉だけでなく、秘密情報の範囲を明確にする、公知情報などの例外を定める、取引終了時の返還・廃棄方法を整理するといった調整も考えられます。開示側の保護と受領側の管理負担の双方を踏まえて合意することが重要です。

NDAの有効期間を決める際のチェックポイント

NDAの期間は、有効期間の条項だけで確認を終えず、更新・終了・存続・返還などの関連条項とあわせて確認しましょう。

確認項目 確認する内容
取引・検討の期間 情報のやり取りがいつまで続くか
情報の保護期間 秘密情報の価値がいつまで維持されるか
自動更新 更新の必要性、更新後の期間、繰り返し更新の有無
更新拒絶の通知 通知期限、宛先、方法、到達の確認
中途解約・解除 満了前に終了した場合も必要な義務が続くか
存続条項 対象となる義務、期間、起算点、参照する条番号
返還・廃棄 対象資料、対応時期、複製やバックアップの扱い

まとめ

NDAの有効期間は、情報の性質や取引期間に応じて設定します。年数だけを見るのではなく、契約期間、終了後の秘密保持義務の存続期間、自動更新の有無を分けて確認することが大切です。

更新を止めるための通知期限や、中途解約した場合の義務、返還・廃棄の扱いも確認し、契約内容に沿って日々の情報管理を行いましょう。

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