投稿日:2026.10.23

法務DXでおすすめの取り組みは?課題別の進め方・活用できるツールを解説

法務DXとは、デジタル技術を活用して法務業務を効率化するだけでなく、業務プロセスや情報の管理・活用方法そのものを見直していく取り組みです。しかし、法務DXを進めたいと考えていても、「どの業務から着手すればよいのか」「どのようなツールを導入すべきなのか」と迷うケースは少なくありません。

一口に法務DXといっても、その対象は法務相談の受付や案件管理、契約書レビュー、電子契約、契約書管理、リーガルリサーチ、ナレッジ活用などさまざまです。そのため、単純に評判のよいツールを選ぶのではなく、まずは自社の法務業務にどのような課題があり、どこから改善すべきかの整理から始めるのがおすすめです。

この記事では、法務DXで検討したい主な取り組みを比較しながら、課題に応じてどのような施策やツールを選ぶとよいのかを解説します。

法務DXで「おすすめ」を考える前に、自社の課題を整理する

法務DXというと、新しいシステムやAIツールの導入をイメージする方も多いかもしれません。しかし、ツールを導入すること自体が法務DXの目的ではありません。例えば、法務部門では次のような課題が発生します。

  • 法務への相談がメールやチャット、口頭などに分散している
  • 誰がどの案件を担当しているのか分からない
  • 契約書レビューに多くの時間がかかっている
  • 契約締結のための押印・郵送に手間がかかる
  • 締結済みの契約書を探すのに時間がかかる
  • 法令・判例などの調査に時間がかかる
  • 過去の案件や法務判断が担当者ごとに蓄積されている

これらは、それぞれ適した解決方法が異なります。

例えば契約締結に時間がかかっているのであれば電子契約が有効ですが、法務相談の対応状況が見えない企業に電子契約を導入しても、その課題を直接解決することはできません。

したがって法務DXでは、

「自社の課題」→「取り組むべきDX施策」→「必要なツール」

という順番で考えることが大切です。

なお、法務DXそのものの意味や、IT化との違い、具体的な進め方については下記の記事で詳しく紹介しています。

関連記事:法務DXとは?実務での進め方を3ステップで解説

法務DXでおすすめしたい8つの取り組みを比較

法務DXで検討できる施策は多岐にわたります。ここでは、製品そのものではなく「どの業務を、どのような方法で改善するか」という観点から、主な法務DX施策と活用できるツールの種類を比較します。

法務業務の課題 おすすめのDX施策 活用できるツール
相談・依頼が複数の経路に分散する 法務相談窓口の一元化 法務相談・案件管理システム
誰が何を対応しているか分からない 案件・進捗の可視化 法務案件管理システム
契約書レビューに時間がかかる 契約審査の効率化 AI契約書レビュー
押印・郵送に時間がかかる 契約締結の電子化 電子契約システム
契約書の検索・期限管理が大変 契約情報の一元管理 契約書管理システム
法令・判例調査に時間がかかる リサーチ業務の効率化 リーガルリサーチツール
過去案件や判断を活用できない 法務ナレッジの蓄積・活用 法務ナレッジ管理システム
複数の法務業務に課題がある 法務プロセス全体の一元管理 CLM

自社の課題がどこにあるのかによって、優先すべき取り組みは変わります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

法務相談・依頼受付を一元化する

事業部門から法務部門への相談は、メールやビジネスチャット、口頭など、さまざまな方法で行われます。相談件数が少ないうちは個別に対応できても、案件が増えるにつれて、

  • 依頼を見落とす
  • 必要な情報がそろっていない
  • 誰が対応しているのか分からない
  • 後から相談内容や回答を探せない

といった問題が生じやすくなります。こうした企業では、法務相談・依頼受付を一元化することが法務DXの一つの選択肢です。

依頼内容や関連資料、担当者、回答などを案件単位で管理できるようになれば、受付から対応までの情報を追いやすくなります。

法務相談や案件管理に利用できる具体的なサービスについては、下記の記事で詳しく紹介しています。

関連記事:法務相談システムおすすめ比較|案件管理を効率化する選び方を解説

法務案件の進捗や業務量を可視化する

依頼を受け付ける仕組みを整えても、案件の進捗を適切に管理できなければ、法務部門全体の状況を把握することは難しいままです。例えば、

  • 現在どれだけの案件を抱えているのか
  • 誰がどの案件を担当しているのか
  • どの案件が長期間止まっているのか
  • どの部署からどのような相談が多いのか

といった情報が一覧で確認できれば、担当者間での業務分担や案件の優先順位を判断しやすくなります。

さらに案件データを蓄積すれば、「契約審査にどの程度の時間がかかっているか」「特定の事業部からどのような相談が増えているか」といった分析にもつなげられます。

単に案件をデジタルで管理するだけでなく、法務業務そのものをデータとして把握できる状態をつくることも、法務DXにおける重要な取り組みの一つです。

AIを活用して契約書レビューを効率化する

契約書レビューは専門的な判断が求められる一方、法務部門の工数を多く使いやすい業務です。

特に契約件数が増えると、

  • NDAなど定型的な契約にも一定の確認時間が必要になる
  • 契約書を一通り確認する必要がある
  • 担当者によって確認観点にばらつきが生じる

といった課題が発生します。こうした業務では、AI契約書レビューを活用する方法があります。

契約書をAIで分析し、リスクが想定される条文や確認ポイントなどを提示することで、人が重点的に確認すべき箇所を絞りやすくなります。ただし、AIによる確認だけで法的判断を完結させるのではなく、AIを一次確認に利用し、最終的な判断は法務担当者が行うなど、人とAIの役割を整理したうえで活用することが重要です。

関連記事:AI契約書レビューおすすめ5選を比較|選び方や利用時の注意点も解説

電子契約で契約締結をデジタル化する

契約書を紙で締結している企業では、印刷、製本、押印、郵送など多くの作業が発生します。電子契約を導入すれば、オンライン上で契約締結まで進められるため、こうした作業の削減が期待できます。また、遠隔地の取引先との契約でも郵送を待つ必要がなくなるなど、契約締結にかかる時間の短縮にもつながります。

一方で、電子契約を導入しただけでは、法務相談や契約審査、締結後の契約管理まで自動的に改善されるわけではありません。

自社の課題が「契約締結」にあるのか、それとも契約業務全体にあるのかを切り分けて導入を検討するとよいでしょう。

締結済み契約書と契約情報を一元管理する

契約締結後にも、法務部門には継続的な管理業務が発生します。例えば、

  • 契約期間
  • 更新期限
  • 自動更新の有無
  • 契約当事者
  • 解約期限

などの情報を管理する必要があります。契約書が紙、共有フォルダ、電子契約サービスなど複数の場所に保存されていると、必要な契約書を探したり、期限を確認したりするだけでも時間がかかります。

契約書管理システムを活用すれば、契約書と契約情報を一元的に管理し、検索や期限管理を効率化できます。

近年では、契約書をアップロードするとAIが契約情報を読み取り、管理台帳を作成するような機能を備えたサービスもあります。

関連記事:契約書管理システムおすすめ6選を比較|目的別の選び方・機能・料金を解説

リーガルリサーチのデジタル化、AI活用を進める

法務DXの対象は契約業務だけではありません。法務部門では、法令や判例、ガイドライン、法改正情報などを調査するリーガルリサーチも日常的に発生します。

従来は複数のデータベースやWebサイトから必要な情報を探す必要がありましたが、リーガルリサーチサービスを利用することで情報検索を効率化できます。

また、生成AIを活用して関連情報を整理したり、調査の手がかりを得たりする方法も広がっています。

ただし、生成AIによる回答には誤った情報が含まれる可能性もあるため、法令や公的資料などの一次情報を確認する運用が欠かせません。

関連記事:リーガルリサーチを生成AIで効率化するには? 4つの工程に分解する法令調査の設計方法

過去案件や法務判断をナレッジとして活用する

法務部門では、日々の業務を通じて多くのナレッジが蓄積されています。例えば、

  • 過去に似た契約をどのように修正したか
  • 特定の取引先との交渉で何を論点としたか
  • ある法務相談について、なぜその判断をしたのか

といった情報です。しかし、これらがメールやチャット、担当者のPCなどに分散していると、別の担当者が同じような案件を担当した際に活用できません。

過去の案件、契約書、やりとりなどを案件単位で蓄積し、後から検索・参照できる状態にすることで、法務ナレッジを組織として活用しやすくなります。

さらに生成AIを活用する場合にも、自社の過去案件や判断基準を参照できるデータとして整備しておく意義は大きいといえます。

複数の法務業務をCLM・統合型法務システムで一元管理する

課題が特定の業務に限定されている場合は、その業務に特化したツールを導入する方法があります。一方で、複数の課題がつながっている場合には、個別にツールを追加するだけでなく、法務業務のプロセス全体を管理する方法も検討した方がよいでしょう。

法務業務は、本来それぞれが独立しているわけではありません。例えば契約業務であれば、事業部からの依頼 → 法務相談・案件受付 → 契約審査 → 社内承認 → 契約締結 → 契約管理 → 過去案件の活用というように、一連のプロセスとしてつながっています。

しかし実際の業務では、依頼受付はメール、案件管理はExcel、契約審査はWord、やりとりはチャット、契約締結は電子契約、締結後は別の契約管理システムといったように、工程ごとに情報が分断されているケースもあります。

個々のツールを導入すれば、それぞれの工程を効率化できます。しかし、法務DXをさらに進めるためには、「それぞれの業務で生まれたデータがどのようにつながるか」という視点も重要です。

特に複数の法務業務に課題がある企業では、CLM(Contract Lifecycle Management:契約ライフサイクル管理)や、複数の法務業務を一元管理できるシステムも比較対象となります。

法務オートメーション「OLGA」では、法務案件や契約情報、過去のやりとりなどを一元管理し、AIが参照できる法務ナレッジとして蓄積する仕組みを提供しています。

法務相談の受付・案件管理から契約審査、締結後の契約管理まで一連のプロセスをカバーすることで、個々の業務効率化だけでなく、法務業務で生まれるデータを継続的に蓄積・活用できる状態を目指します。

関連記事:CLM(契約ライフサイクル管理)ツールのおすすめ比較|主要サービスの特徴と選び方を解説

法務DXツールを比較するときの3つのポイント

法務DXツールにはさまざまな種類があります。単純に機能数や知名度だけで比較するのではなく、自社の法務業務との相性を確認することが重要です。

自社の課題を解決する機能があるか

まず確認したいのは、そのツールによって自社の課題を解決できるかです。例えば法務案件の進捗管理に課題があるにもかかわらず、契約書レビュー機能だけを比較しても十分な解決にはつながりません。

あらかじめ、

「現在どの作業に時間がかかっているのか」
「どのようなミスや抜け漏れが起きているのか」
「何を改善できれば導入効果があったと判断できるのか」

を整理しておくと、必要な機能を比較しやすくなります。

現在の業務フローに組み込みやすいか

ツールを導入することで、利用者側に大きな運用変更が必要になる場合もあります。特に法務部門だけでなく事業部門も利用するシステムでは、新しい操作を覚えたり、これまでとは異なる方法で法務へ依頼したりする必要があると、社内への定着に時間がかかる可能性があります。

現在利用しているメールやチャット、ワークフローなどとの連携可否も含め、既存の業務フローに無理なく組み込めるかを比較するとよいでしょう。

将来的な活用を見据えて法務データを蓄積できるか

法務DXを進める際は、個々の業務の効率化だけでなく、そこで生まれる情報をどのように蓄積するかも重要です。例えば契約書レビューだけをデジタル化しても、

  • 事業部からどのような相談を受けたのか
  • 審査の過程でどのような修正をしたのか
  • 誰がどのような判断をしたのか
  • 最終的にどの契約書を締結したのか

という情報が別々に管理されていると、後から案件全体を振り返ることが難しくなります。

今すぐ必要な機能だけでなく、将来的に法務案件や契約情報、過去の判断をつなげて活用できるかという視点で比較することも大切です。

法務DXは「自社のどこを変えるか」から考える

法務DXに取り組む際、すべての企業に共通する「最もおすすめのツール」があるわけではありません。法務相談の受付、案件管理、契約書レビュー、電子契約、契約書管理、リーガルリサーチ、ナレッジ活用など、法務DXの対象となる領域はさまざまです。

まずは現在の業務を整理し、どこにボトルネックがあるのかを明確にすることから始めましょう。

法務DXを「新しいツールを導入すること」と捉えるのではなく、自社の法務業務をどのような形に変えていきたいのか。そのゴールから逆算して、取り組む領域やツールを選ぶことが重要です。

この記事の監修者

山本 俊

GVA TECH株式会社 代表取締役
GVA法律事務所 創業者

山本 俊

弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にスタートアップとグローバル展開を支援するGVA法律事務所を設立。
2017年1月にGVA TECH株式会社を創業。AI法務アシスタント、法務データ基盤、AI契約レビュー、契約管理機能が搭載されている全社を支える法務OS「OLGA」やオンライン商業登記支援サービス「GVA 法人登記」等のリーガルテックサービスの提供を通じ「法とすべての活動の垣根をなくす」という企業理念の実現を目指す。

Xアカウント:@gvashunyamamoto

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